ISIS最高指導者、複数の潜伏先を転々か 米当局者ら分析

ISIS最高指導者のアブバクル・バグダディ容疑者

2016.06.14 Tue posted at 14:38 JST

ワシントン(CNN) 過激派組織「イラク・シリア・イスラム国(ISIS)」の最高指導者アブバクル・バグダディ容疑者について、米主導の有志連合から逃れるために潜伏先を転々としているとの新たな説が浮上している。米政府内の複数の機関の当局者らがCNNに語った。

バグダディ容疑者はこれまで、ISISが「首都」と称するシリア北部ラッカに潜伏しているとみられていた。しかしCNNが取材した6人前後の米当局者によると、最近の分析では同容疑者が絶えず居場所を変えている可能性が指摘されている。

有志連合の調整を担当するマクガーク米大統領特使は10日、バグダディ容疑者を名乗る音声テープが昨年12月に公開されたことに言及し、「バグダディ容疑者が今も生存していることを否定する根拠はないが、昨年末以降は音沙汰がない」と述べた。

米当局者らが口をそろえて指摘するのは、現時点でバグダディ容疑者の正確な所在は分からないという点、そして同容疑者が居場所を隠すために厳戒態勢を敷いているとみられる点だ。

バグダディ容疑者の所在をめぐっては数カ月前から、ラッカ中心部かその周辺の建物に潜伏しているとの説が流れていた。CNNが複数の当局者から聞いたところによると、内部に刑務所が設けられていたとみられるビルが有力視されていた。また米軍が民間人の犠牲を恐れて空爆に踏み切れないだろうとの推測から、ラッカ中心部の人口密集地域を潜伏先に選んでいるともみられていた。

ラッカは長期にわたってISISの確固とした支配下にあり、周囲にも敵対勢力がいない。ISIS側としては、米軍がこうした場所で国際テロ組織アルカイダの指導者オサマ・ビンラディン容疑者を殺害した時のような急襲作戦を仕掛けてくることはないだろうと考えている可能性もある。

モスルへの複数回の移動を示唆する情報もあるという

バグダディ容疑者のラッカ潜伏説は決して排除されたわけではない。しかし最近は移動説が盛んに議論されていると、当局者らは指摘する。

バグダディ容疑者がこの半年間に少なくとも2回、イラク北部モスルを訪れていたとする信頼性の高い情報もあるという。情報が遅れて米軍による空爆や拘束作戦には間に合わなかったようだが、これも移動説の根拠のひとつとなっている。

移動説が浮上している背景には、これまでの作戦でISIS幹部らの構成が明らかになり、そのうち何人かを殺害したにもかかわらず、バグダディ容疑者の所在を示す直接的な情報は一切出てきていないという事実がある。

例えば3月には、ISISの「財務相」役にあった人物と最高位の司令官が米軍の空爆で死亡した。2人ともバグダディ容疑者と連絡を取っていたはずだが、同容疑者に関する手掛かりは見つかっていない。

バグダディ容疑者は2年前、イスラム教の断食月(ラマダン)にモスルのモスク(イスラム教礼拝所)で説教する姿が確認された。米当局は、6日から始まった今年の断食月でも同容疑者が公の場に現れる可能性があるとみて、監視の目を強めているという。

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