米民主クリントン氏、代議員過半数獲得も前途は多難か

米国の主要政党で初の女性大統領候補となるヒラリー・クリントン氏

2016.06.07 Tue posted at 20:11 JST

(CNN) 米大統領選に向けた民主党の指名争いで、ヒラリー・クリントン前国務長官の指名獲得が確実になった。だが同氏にとって、この先に控えるホワイトハウスへの道は決して平たんとはいえない。

CNNの集計によると、クリントン氏は6日のプエルトリコ予備選を制した時点で一般代議員1812人と、連邦議会議員や党幹部らで構成される特別代議員572人を確保。合計すると、指名獲得に必要な2383人の過半数ラインを1人上回った。

7日には大票田カリフォルニア、ニュージャージーなど6州での予備戦・党員集会で、さらに代議員数を増やす見通し。米国で女性が主要政党の大統領候補になるのは史上初めてだ。

クリントン氏は6日、カリフォルニア州ロングビーチの集会で「私たちは歴史的な、前代未聞の瞬間を迎えようとしている」と述べる一方、「まだやるべき仕事がある。明日の6州でも1票1票のために精一杯戦う」と宣言した。

女性の社会進出を阻む目に見えない障害は「ガラスの天井」と呼ばれる。クリントン氏は8年前、オバマ現大統領との指名争いに敗れ、「最も高い所にある、最も硬いガラスの天井」を砕くことができなかったと嘆いた。来月開かれる民主党全国大会ではついに天井を打ち破り、共和党候補に確定している実業家ドナルド・トランプ氏と本選で対決することになりそうだ。そしてその対決は、米大統領選史上最も醜い争いのひとつになるとの見方が強まっている。

サンダース氏は党大会まで戦い続ける姿勢を崩していない

クリントン氏はトランプ氏のビジネス歴や人格、選挙の戦い方を批判し、大統領にふさわしくないと訴えてきた。一方トランプ氏は、クリントン氏をうそつきと非難し、信頼できない人物だと主張する。

クリントン氏はトランプ氏との対決を視野に入れながら、党の態勢を立て直すという課題にも取り組む必要がある。これまで指名を争ってきたライバルのバーニー・サンダース上院議員は当初こそ泡沫候補とみられていたが、党主流派に挑んだ戦いぶりが党内の進歩派から大きな支持を集めた。7日の予備選・党員集会を前に、党大会まで戦い続ける意向を改めて表明している。

サンダース氏は計算上、もはや勝ち目がないとされる。だがサンダース陣営の責任者は6日の声明で、「民主党全国委員会は、党大会当日の投票まで特別代議員の人数を計算に入れるべきではないと明言している。メディアが結論を急ぐあまり、これを無視しているのは残念なことだ」とコメント。特別代議員は予備選・党員集会の結果に縛られず自由に投票できる点を強調し、党大会までの間に鞍替えすることもあり得ると指摘した。

クリントン氏は1969年にウェルズリー大学の卒業生総代を務め、進学したエール大学法科大学院の図書館で夫となるクリントン元大統領と出会った。90年代にファーストレディーの立場から政治にかかわって賛否両論を巻き起こした頃、同氏がやがて党の大統領候補になるとはだれも想像していなかった。

大統領候補としての経歴は突出している。大統領職の現実を夫のかたわらから、過去のどんな候補者よりも間近で見つめた経験を持つ。信じがたいほどのしなやかさで数々の危機を乗り越えてきたし、政策に関する見識の高さもよく知られている。

共和党のトランプ氏(右)との対決に向け、民主党内の結束を固めることが課題だ

その一方で弱点もある。トランプ氏と同じく、世論調査では大統領候補としての支持率が史上最低クラスにとどまっている。また国務長官時代の私用電子メールをめぐる問題は、同氏の透明さや誠実さに改めて疑問を投げ掛けた。さらに当時のリビアやロシアへの対応は、トランプ陣営に厳しく追及されそうだ。

そして民主党内では主流派と進歩派の深い溝を埋め、結束を固めなければならない。進歩派はこれまでにサンダース氏を十数州で勝利に導き、党がクリントン氏に有利なレースを仕組んでいるとの批判を展開してきた。クリントン氏の指名獲得が確定することで、こうした不満はさらに強まるかもしれない。

サンダース氏は5日、CNNとのインタビューで、クリントン氏が指名レースの開始前から特別代議員400人の支持を取り付けていたのは不公平だと改めて批判した。

クリントン氏が11月の本選で勝つには、民主党内の結束が不可欠だ。同氏の支持率は当初、トランプ氏を大幅に上回っていた。しかしトランプ氏が共和党内の支持固めを進めるにつれ、最近の世論調査では接戦の様相が強まっている。

クリントン氏は08年大統領選で最有力候補と目されながら初戦のアイオワ州でつまずき、接戦の末に苦杯をなめた。当時のオバマ氏と同じように、今回はサンダース氏という意外な人物が、左派寄りから草の根の挑戦を突きつけてきた。アイオワ州での辛勝、ニューハンプシャー州での屈辱的な敗北で始まった今回のレースは次第に激しさを増したが、南部諸州やニューヨーク、ペンシルベニア州など大票田で勝利を重ね、特別代議員数での優位にも助けられて、ついに指名獲得を果たしたとみられる。

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