(CNN) イラク軍は30日、過激派組織「イラク・シリア・イスラム国(ISIS)」の拠点となっている中部ファルージャの奪還に向け、市中心部へ攻め込む作戦を開始した。
軍報道官が同日早朝、国営テレビを通して作戦開始を宣言した。戦闘にはイラクの対テロ部隊や地元アンバル州の警察、シーア派の民兵組織「人民動員隊」も参加し、イラク空軍と米軍主導の有志連合が上空から援護している。
イラク軍はこれに先立ち、ファルージャ南郊の村ヌアイミヤを奪還。30日早朝までの作戦で、北西へ約10キロ離れた町サクラウィヤや北と西の方角に位置する複数の村も押さえていた。
ファルージャは首都バグダッドの西約65キロに位置する。奪還作戦の第一段階は先週始まった。26日には北東約16キロのカルマが政府の支配下に入り、市の東側は制圧がほぼ完了していた。
有志連合のウォーレン報道官が30日、CNNの番組で語ったところによると、現地では米軍要員5000人余りがイラク軍に訓練や助言、支援を提供している。同報道官は「イラクはISISという獣に侵略された。しかし今、ISISはイラク、シリアの両国で支配地を失いつつある」と述べた。
ただファルージャでは今後の市街戦で、市内に残る多数の住民が戦闘に巻き込まれる恐れがある。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は、空爆の激化ですでに推定5万人の市民が危険にさらされていると警告。さらに、ISISの戦闘員になることを拒否して殺害される成人男性や少年の数が急増していると指摘する。そのうえ戦闘で民家が倒壊し、住民ががれきの下で生き埋めになったり、死亡したりする例も後を絶たないという。
軍によると、住民のうちすでに退避したのは女性や子どもを中心とした数百人。難民支援団体のノルウェー難民評議会(NRC)は、住民らが食料や医薬品、電力の不足に直面していると報告した。
イラク北部モスルの近郊でも29日早朝から、クルド人自治区の治安部隊「ペシュメルガ」が複数の村に奪還作戦を仕掛けている。
隣国シリアでは先週、ISISが「首都」と称する北部ラッカに対し、クルド人とアラブ人の部隊が進撃を開始した。