(CNN) オバマ米大統領は15日、米ニュージャージー州にあるラトガース大学の卒業式でスピーチを行い、「政治においても実生活においても、無知は美徳ではない」と強調した。名指しこそしなかったものの、大統領選で共和党の指名が確実になった実業家のドナルド・トランプ候補を牽制(けんせい)した発言だったと思われる。
同大の卒業生1万2000人あまりを前にオバマ大統領は、「自分が何を言っているか分かっていないのは格好が悪い。それでは現実性を保つことも、現実のように思わせ続けることもできない。それは政治的正しさに対する挑戦ではない。ただ自分の言っていることが分かっていないだけだ。だが私たちはそのことに惑わされてしまう」と語りかけた。
オバマ大統領は最近行った別の演説でも、トランプ氏を念頭に置いた同様の発言を繰り返している。
ラトガース大学のスピーチではさらに、米国は昔の方が良かったという主張に反論し、国境に壁を築くアイデアも否定。「それは人間の本性かもしれない。後ろを振り返って想像上の過去を懐かしみ、昔はみんながよく働いて経済は好調で、政治家はみな賢くて子どもは誰もが行儀良く、米国は世界中で何でもやりたいことができていたと考える」「しかし実はそうじゃない。古き良き時代はそれほど良くなかった」と指摘した。
トランプ氏が昨年12月に打ち出した、イスラム教徒の米国への入国を禁止する案に対しても、「イスラム教徒を孤立させたり低く見たりすることは、我々の美徳に対する裏切りであるばかりか、私たちの本質に対する裏切りでもある。国内外での過激主義との戦いにおいて最も重要なパートナーを遠ざけることになるだろう」と反論した。
ラトガース大学の卒業式で現職の米大統領がスピーチするのは今回が初めて。