小児病院空爆で50人死亡、停戦は崩壊寸前 シリア

シリア北部アレッポで小児病院が空爆を受け50人が死亡した

2016.04.29 Fri posted at 10:21 JST

(CNN) シリア北部の都市アレッポで小児病院が空爆され、人権団体や人道支援団体によると少なくとも50人が死亡した。国連によれば、アレッポはこの数日で戦闘が激化し、壊滅的な状況に陥っている。

国連のスタファン・デミストゥラ・シリア問題担当特使は28日、スイスのジュネーブで記者団に対し、シリア全土の停戦は深刻な崩壊の危機に瀕していると述べ、アレッポなど4都市では衝突が激化して人道危機の瀬戸際に追い込まれていると指摘した。

目撃者によると、アレッポで反体制派が制圧する地域にあるアルクッズ野戦病院は、27日に戦闘機から発射されたミサイルが着弾した。

国際医療支援団体、国境なき医師団のバブロ・マルコ氏によると、この空爆で少なくとも50人が死亡した。この中には医師2人と看護師2人など、病院職員少なくとも6人が含まれるという。犠牲者数はさらに増える可能性もある。

米国務省のケリー長官は、空爆されたのは国境なき医師団と赤十字国際委員会が共同で運営していた病院で、子どもや患者や医療従事者を含む数十人が死亡したと指摘。空爆にはシリアのアサド政権が関与したとの見方を示し、「医療施設と分かっていながら意図的に爆撃されたと思われる。アサド政権にはこうした施設や救急要員を爆撃してきた戦慄(せんりつ)すべき前例がある」と非難した。

一方、シリア国営シリア・アラブ通信(SANA)は、シリア政府軍機による空爆への関与を否定する声明を流した。ロシア外務省も、今回の空爆はロシアが行ったものではないとする声明を発表した。シリア政府軍はロシア軍の協力を得て、数カ月前からアレッポでの攻勢を強めていた。

米軍当局者はCNNの取材に対し、米軍は空爆された病院のある地域では作戦を展開していなかったと説明。空爆を実施したのは最も近い場所で病院の北部20キロの地点だったとしている。

内戦で破壊されたアレッポの様子=2016年2月

国境なき医師団のマルコ氏によれば、空爆された病院付近の建物にたる爆弾2発が着弾して負傷者がこの病院に運び込まれ、家族などが駆けつけていたという。同施設のゲートにも3発目の爆弾が着弾し、多数が負傷していた。

マルコ氏は、「今回の攻撃を行ったのが誰かは分からない」としながらも、「過去にこうしたたる爆弾を日常的に使っていたのがシリア政府だったことは分かっている」とした。

シリアでは全土で停戦が発効中だが、アレッポなどの各地で衝突が激化しており、シリア人権監視団によれば、アレッポでは過去6日で少なくとも148人が死亡した。うち99人は反体制派、49人はシリア政府側の人物だったという。

デミストゥラ特使は米国とロシアの双方に対して和平協議の再開を呼びかけ、停戦は崩壊の瀬戸際にあるとして、「緊急に停戦を復活させなければならない」と強調。「過去48時間の平均で、シリア人は25分ごとに1人が死亡、13分ごとに1人が負傷している」と指摘した。

シリア和平協議の次回会合がいつ開かれるかは決まっていない。

シリアへの人道支援を担当する国連作業部会のヤン・エグランド氏は、アレッポやホムスの一部では「壊滅的に事態が悪化」していると述べ、もしこのまま空爆が続けば、包囲されている35地点に国連が支援物資を届けることができなくなると危機感を示した。支援物資の提供は一刻を争う状況だと同氏は訴えている。

小児病院空爆で50人死亡 シリア

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