トランプ、クリントン両氏が圧勝の東部5州 5つのポイント

第2の「スーパーチューズデー」とも呼ばれる東部5州の戦いを分析

2016.04.27 Wed posted at 20:23 JST

インディアナ州ナイツタウン(CNN) 米大統領選へ向けた民主、共和両党の候補指名争いで、共和党の実業家ドナルド・トランプ氏と民主党のヒラリー・クリントン前国務長官が指名獲得に大きく近づいた。26日に東部5州で実施された予備選の結果を、5つのポイントにまとめる。

両党の予備選はペンシルベニア、メリーランド、コネティカット、デラウェア、ロードアイランドの5州で実施され、トランプ氏は全ての州、クリントン氏はロードアイランドを除く4州を制した。両氏とも勝利演説では、指名獲得を前提として本選への意気込みを語った。

1.絶好調のトランプ氏

共和党のテッド・クルーズ上院議員とジョン・ケーシック・オハイオ州知事が「反トランプ」で共闘体制を組んだのに対し、トランプ氏は5州全勝という結果で応えた。

ニューヨーク・マンハッタンのビジネス拠点「トランプ・タワー」で勝利演説を行った同氏は、自身が党指名候補となることはほぼ確定したと述べ、「私としてはもう決着がついた」と言い切った。

そのうえで、自身がこれまでに打倒してきた共和党候補らに比べれば、クリントン氏を破るのは簡単だと宣言。「率直に言って、クリントン氏が男性だったら得票率は5%程度だろう。彼女の唯一の武器は女性というカードだが、はっきり言って女性たちからは嫌われている」と批判した。

共和党の2番手として挑戦を続けるクルーズ氏を「時間の無駄遣いだ」と切り捨て、同氏とケーシック氏の共闘については「いいことだと思う。彼らの弱さや無能さ、苦しい選挙戦が浮き彫りになるからだ」と言い放った。

本選を視野に入れ、党の団結を訴えるクリントン氏

次の予備選は5月3日のインディアナ州。クルーズ、ケーシック両氏がトランプ氏の指名獲得を阻止するためには非常に重要な争いとなるが、トランプ氏は26日、同州も勝てるとの自信を示した。インディアナを制すれば、同氏が党大会までに代議員の過半数を確保することも可能になる。

2.指名へ近づくクリントン氏

クリントン氏はペンシルベニア、メリーランド両州などでの大勝により、いよいよ本選へ重点を移す段階に来た。その第一歩は党内の結束を固めることだ。

同氏はペンシルベニア州フィラデルフィアでの勝利演説で、ライバルのバーニー・サンダース上院議員やその支持者らをたたえ、和解へ導く姿勢を示した。

争いを正式に終えたわけではないが、この先よほどのことがない限り、クリントン氏が敗れるとは考えにくい。

本人も強調している通り、クリントン氏とサンダース氏との差は、2008年の大統領選でこの時期にオバマ現大統領がクリントン氏につけていた差をはるかに上回っている。

フィラデルフィアでは7月に民主党の党大会が開かれる。クリントン氏は26日夜、「我々は最大の得票数と代議員数を携えてここへ戻ってくる」と述べ、「党をひとつにしてこの選挙に勝つ」と宣言した。

共和党員からの支持を着々と伸ばしているトランプ氏

3.「トランプ候補」に傾く共和党のムード

トランプ氏はこの日、予備選での大勝に加えて出口調査でも好結果を手にした。

調査では、反トランプの立場から投票すると答えた共和党員が減少。ペンシルベニアとメリーランド、コネティカットの各州では、トランプ氏だけが過半数の共和党員から「本選で支持する」との回答を得た。同氏はまた、これまで苦手とされていた大卒者やキリスト教福音派といった層からも票を勝ち取った。

クルーズ、ケーシック両氏や反トランプ派は、指名争いの決着を党大会まで持ち込み、決選投票で逆転するというシナリオを狙っている。だがペンシルベニア州では、予備選の過程で最も多くの支持を得た候補者と「最良の候補者」のどちらが指名されることを望むかという質問に対し、前者と答えた人が7割を占めた。

同州ではまた、トランプ氏が指名された場合、本選ではトランプ氏に投票しないと答えた共和党員が22%と、これまで4割前後だった他州の割合を大きく下回った。

バーニー・サンダース氏。演説では指名獲得の可能性に言及せず

4.特別代議員を狙うサンダース氏

獲得した代議員数でクリントン氏に大きく引き離されているサンダース氏は26日夜、州知事や連邦議会議員、党幹部らで構成する特別代議員に着目し、自身への支持を呼び掛けた。

サンダース氏は全米の世論調査ではクリントン氏と競う支持率を維持し、集めた資金はクリントン陣営を超えている。5月に予備選を控えるウェストバージニア州での演説では「全米世論調査での支持率はトランプ氏を15~20ポイント上回り、クリントン氏をはるかにしのいでいる」と強調した。

しかし今後のレースで、たとえ大票田のカリフォルニア州を制したとしても、クリントン氏の代議員数に追いつくことはほぼ不可能となった。

26日深夜の演説では厳しい現実を受け入れたのか、「党大会で進歩主義的な党綱領が採択されるよう、できるだけ多くの代議員を送り込みたい」と語り、指名獲得の可能性には言及しなかった。

サンダース氏の弱点は、民主党員から票を集められないことだ。先週のニューヨーク州や26日の4州での予備選は、登録済みの党員に限定した「クローズド」方式。サンダース氏が唯一勝ったロードアイランド州が無党派層も投票できるオープン方式だったのは、決して偶然ではない。

ただ26日の世論調査では、メリーランド、コネティカット両州の民主党員のうち6割が、同氏らの選挙戦によって党内が分裂するのではなく、活気づいたと評価していた。ペンシルベニア州では、クリントン政権の誕生が楽しみだという声と、サンダース政権に期待を寄せる声が、ともに民主党員の3分の2を占めた。

クルーズ氏はメディアに批判の矛先を向けた

5.インディアナに全力を注ぐクルーズ氏

クルーズ氏は26日の結果が芳しくないことを予想していた。そこで同氏はこの日、次のレースの舞台となるインディアナ州で集会を開き、予備選の投票が締め切られる20分前、まだ何の結果も発表されていないタイミングで登壇した。

結果を知らせるテレビ画面もなく、祝勝パーティーの雰囲気からもほど遠い会場で、東部5州の結果にはほとんど触れずに支持を訴えた。

5州でのクルーズ氏の支持率は低く、ペンシルベニア、コネティカット両州の出口調査では、同氏が指名候補となった場合、本選では票を入れないと断言した人が共和党員の約4割を占めた。

クルーズ氏は、トランプ氏を指名候補になるよう仕向けているのはメディアだと主張する。トランプ氏を支持しているからではなく、クリントン氏を勝たせるために最も弱い相手を立てようとしているからだという。

これに対してCNNの政治評論家、S・E・カップ氏は「共和党で最も弱い候補を立てようとするなら、トランプ氏ではなくてクルーズ氏になるはずだ」と反論。クルーズ氏の主張には説得力がないと指摘している。

90秒で振り返る、東部5州の予備選

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