ワシントン(CNN) 過激派組織「イラク・シリア・イスラム国(ISIS)」は資金繰りが悪化して、戦闘員の士気が低下している様子がうかがえるという。米軍の司令官や内部文書を入手した専門家が明らかにした。
ISISの内部文書を入手した米シンクタンク、中東フォーラムのアイマン・タミミ研究員が22日に公表した報告書によると、ISISは戦闘員に対して節電を促し、公用車の私的利用を禁止した。戦闘員の士気は低下しており、医師の診断書をもらって前線への配備を免れようとするメンバーもいるという。
ISIS撲滅作戦を担う米空軍の副司令官、ピーター・ガーステン少将も26日の記者会見で、ISISの現状について「戦闘員の脱走率が増え、士気は低下している。給与を払うこともできなくなっている」と語った。
米軍率いる有志連合は昨年10月以来、ISISの資金源を断つ目的で石油インフラや財政拠点を狙った空爆を続けてきた。ガーステン氏は、この空爆で3億~8億ドル(約330億~890億円)の損害を生じさせたと推定。今後もISISの財政拠点に対する空爆を続けると強調した。
内部文書によれば、戦闘員が受け取る月給は平均で約50ドル(約5600円)。これに妻や「性奴隷」1人当たり50ドル、子ども1人当たり35ドル、扶養している親1人当たり50ドルなどの手当てが上乗せされる。
先に流出した文書では、ISISが「首都」と称するシリアのラッカにいる戦闘員は、給与が半分にカットされたことが判明していた。
人材集めにも苦慮している様子で、シリア中部のパルミラなどでの敗北を受けて戦闘員を増やそうとしたものの、失敗に終わったとされる。
タミミ氏は昨年10月の時点で、ISISが「脱走者に対する恩赦」を発表したと伝えていた。
戦闘員が増員できない一因として、医師から偽の診断書をもらって戦闘を免れようとするメンバーが存在することも判明した。ただし医師が支配地域から脱出する中で、ISISは「医療頭脳流出」の事態に直面しているという。
ただ、ISIS支配地域の住民は長年の内戦で貧しい生活に慣れており、ISISに対する大規模な反乱が起きることは予想できないとタミミ氏は指摘する。ガーステン氏も「この戦闘は忍耐と時間を要する」と強調した。