NY予備選、大差の結果にみる5つのポイント

ニューヨーク予備選の夜にライトアップされたエンパイアステートビル=WPIX

2016.04.20 Wed posted at 20:12 JST

(CNN) 米大統領選の党候補者指名を争うニューヨーク州の予備選で、共和党は実業家のドナルド・トランプ氏、民主党はクリントン前国務長官が勝利を収め、両氏とも指名獲得に大きく近づいた。同州の結果から分かったことを5つのポイントにまとめる。

1.トランプ氏、地元で圧巻の強さ

トランプ氏はニューヨーク市のクイーンズ区出身。このところ陣営幹部が交代したり獲得したはずの代議員を奪い取られたり、人工妊娠中絶をめぐる発言が批判を浴びたりと、良い話のなかった同氏だが、ライバルのテッド・クルーズ上院議員、ジョン・ケーシック・オハイオ州知事を引き離して圧勝した。また同州の共和党員を対象とした出口調査では、本選で民主党のクリントン氏に勝てる可能性が最も高い候補とみられていることが分かった。

自身のビジネス拠点、トランプ・タワーで有力者らとともに檀上に立った同氏は「テレビで見る限り、もはや大したレースではない」と述べ、クルーズ氏は「数字の上でほぼ排除された」との見方を示した。

クルーズ陣営が最近になって代議員数を着実に伸ばしてきたことに対し、トランプ氏は19日、党が自分から「選挙を取り上げようとしている」と改めて主張。ニューヨーク州の争いは有権者が投票所に出向いて票を投じる公平な形式だったと強調し、党員集会や州党大会を得意としてきたクルーズ氏を批判した。さらに、こうした方式の選挙は「不正に操作されている」との説を展開した。

今後、第2の「スーパーチューズデー」とも呼ばれる26日には、メリーランドやペンシルベニアなど北東部諸州での争いが控えている。トランプ氏はこれらの州でも好意的に迎えられる見通しだ。

大票田での予備選はクリントン氏(左)とトランプ氏の圧勝で幕を閉じた

2.クリントン氏も望み通りの大勝

クリントン氏もニューヨーク州とは深いかかわりがあり、勝利演説でも「今回の予備選には個人的な思い入れがあった」と述べた。

同氏が圧勝したことにより、ライバルのバーニー・サンダース上院議員が追いつくことはますます困難になった。クリントン氏はすでに本選を意識しているとみられ、祝勝会では指名獲得の暁に協力を請うことになるサンダース氏の支持者らに向けて「私たちの間を分かつものよりも、結びつけるものの方がはるかに多い」と呼び掛けた。

サンダース氏がここで勝利をつかめれば、形勢逆転のチャンスもあった。その可能性が消えた今、クリントン氏はさらに勝利を積み上げていく必要がある。3月1日のスーパーチューズデーで圧勝した後、ミシガン州を落とした時のような失敗を繰り返すわけにはいかない。

ニューヨーク州の出口調査では、30~49歳の層でクリントン氏への支持が特に目立った。同氏はまた、人種的少数派や女性、高齢者らの間で強みを発揮した。一方サンダース氏は、18~29歳の層や男性、白人の支持率でクリントン氏を上回った。今後レースの行方を左右するニュージャージー州やカリフォルニア州の有権者もニューヨーク州と同様の構成になるため、サンダース氏は苦戦を強いられそうだ。

3.残念な結果に終わったサンダース氏

クリントン氏の支持団体が19日に指摘したところによると、サンダース氏はニューヨーク州の予備選に「勝つ」という発言を少なくとも27回繰り返していた。同氏はこの2週間、出身地のニューヨーク市ブルックリン区にほぼ泊まり込む態勢で支持を訴えていた。

サンダース氏は19日夜、ペンシルベニア州での演説でクリントン氏の勝利に祝福の言葉を贈る一方、ニューヨーク州の予備選は登録済みの党員に限定した「クローズド」方式だったことが問題だと述べた。この方式のために、同氏は他州で強みを発揮した無党派層から力を借りることができなかった。演説では「現行の方式は間違っている。将来は変更するべきだ」と主張した。

サンダース氏は無党派層からの支持が反映されない現行の選挙方式に異議を唱えた

しかし26日に民主党予備選が実施されるペンシルベニア、メリーランド、コネティカット、デラウェア、ロードアイランド各州のうち、無党派層も投票できるオープン方式はロードアイランドのみ。サンダース氏はまたしても同じ問題に直面することになる。

サンダース氏の支持者らはさらに、ブルックリン区の党員登録名簿から昨年秋以降、12万6000人の名前が外されていたとの報道も例に挙げ、ニューヨーク州のレースは不公平だったと訴えている。

CNNの政治評論家によると、サンダース氏が克服できていない根本的な弱点は、黒人票を取り込めないことだという。ニューヨーク州では黒人指導者や関連団体に働きかけ、黒人の歌手や俳優が出演する広告を流したが、支持率を上げることはできなかった。同州でできなかったとすれば、この先の見通しも不透明だと言わざるを得ない。

4.クルーズ氏の長い夜とケーシック氏のピザ作戦

クルーズ氏は19日夜、ペンシルベニア州フィラデルフィアで演説した。ニューヨーク州の結果が出る前のタイミングだったため、同州予備選で3位に終わり、獲得代議員数はゼロという屈辱に言及する場面は避けられた。

ニューヨークのことには何も触れず、「その州出身の候補者が勝つのは当然だ」と、トランプ氏の勝利を暗に受け流した。

クルーズ氏が選んだ演説の場所やタイミングからは、ニューヨーク州での勝利は期待していなかったことがうかがえる。同氏の側近らは事前に、同州で配分される代議員95人のうち、トランプ氏が獲得する人数を90人未満に抑えられれば、それだけでも立派な成果だと話していた。

過熱する指名争いはそれぞれの党にどのような影響をもたらすか

ケーシック氏はピザ店やデリを回る食べ歩き作戦で、トランプ氏に大差をつけられながらも2位に入り、一握りの代議員を獲得。トランプ氏が狙った「総取り」を阻止した。来週、穏健な郊外の選挙区で代議員を集め、そこから「クリントン氏と闘える唯一の共和党候補」として党大会での決着を目指したい構えだ。

5.民主党は活性化、共和党は分断懸念

民主党の指名争いは最近ますます過熱気味で、個人的な非難合戦の様相を呈している。しかし出口調査では民主党員の67%が、この争いは党を活性化させていると回答。逆に党を分断していると答えた人は29%だった。

クリントン陣営の報道責任者は、サンダース氏がレースに残留することは「民主党にとっても米国にとっても非生産的」だと批判する。しかし長期的な目で見れば、民主党員がレースに強い関心を持つことが、本選に向けて党の結束を強める助けとなる可能性もある。

一方、共和党では、指名争いで党が分断されているとの回答が60%を占め、活性化されたとの回答は36%にとどまった。

これは、首位に立つトランプ氏が指名手続きを「不正」と非難し続けているためかもしれない。最終的に候補者が決まった後、党内をまとめるのに手間取る恐れもありそうだ。

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