(CNN) 米国の大学に通うイスラム教徒の男性が、サウスウエスト航空の旅客機内でアラビア語で話していたところ同機から降ろされ、米連邦捜査局(FBI)に事情を聴かれたと訴えている。男性はイスラム教徒差別の典型的な事例だとして、同航空に謝罪を求めた。
カリフォルニア大学バークリー校の学生カイルルディーン・マフズーミさん(26)は今月6日、米カリフォルニア州ロサンゼルス発オークランド行きのサウスウエスト便に搭乗して出発を待つ間、イラクのバグダッドにいるおじと電話で話していたという。
マフズーミさんはその前日、国連の潘基文(パンギムン)事務総長との夕食会に出席したばかりだった。おじとの電話ではアラビア語で興奮気味にそのことを話し、「インシャラー(「アラーの御心のままに」の意味)」と言ったという。この会話の間ずっと、1人の女性がマフズーミさんをにらんでいた。
女性が突然、同機を降りたところから状況は一変する。「2分もたたないうちに、1人の男性が警察官数人を伴ってやって来て、私に同機から降りるよう指示した」。
マフズーミさんによれば、サウスウエスト航空の職員と思われる男性にブリッジまで連れて行かれ、アラビア語で話しかけられたが、その男性のアラビア語が分からなかったため、英語で話してほしいと頼んだという。男性の態度は高圧的で、恐怖を感じたとマフズーミさんは言う。
電話の相手は誰だったのかと尋ねられておじと話していたと答え、潘事務総長との夕食会のビデオも見せると、男性は「なぜアラビア語で話していたのか。知っての通り、その状況は非常に危険だ」と言い放ったという。
続いて手荷物や身体の検査をされ、FBIの捜査員に「殉教者について言ったことを正直に話しなさい」と迫られたとマフズーミさんは振り返る。「その言葉を口にしたことはない。ただインシャラーと言っただけ」と言い返すと、間もなく事情聴取は終わって解放された。ただし「サウスウエスト航空では戻れない」と告げられたという。
サウスウエスト便の運賃は払い戻しを受け、デルタ航空の便を自分で予約し直してオークランドに戻った。帰宅しても動揺が収まらず、数日間起きられなかったという。
マフズーミさんは「イラク人にも米国人にもイラン人にも、人間として共通の尊厳がある」と訴え、サウスウエスト航空に謝罪を求めている。
これに対して同航空は、「出発前に機内で安全を脅かす恐れのある発言が聞こえたとの報告があり、乗員の判断で調査することにした。地元の捜査当局もその乗客と話をしたと認識している」としながらも、プライバシーを理由に詳しい説明は避けた。
FBIの広報は、マフズーミさんから事情を聴き、「それ以上の対応」は取らなかったとしている。
マフズーミさんから報告を受けた米国のイスラム教団体は、「サウスウエストなど航空各社に対する苦情は今年に入って激増している」と指摘する。これに対して同航空は、「サウスウエストでは一切の差別を容認していない」と反論した。