元強制収容所が高級リゾートに モンテネグロ

第2次世界大戦時の強制収容所を高級リゾートとして再開発?

2016.03.12 Sat posted at 13:07 JST

(CNN) 東欧モンテネグロに属する島で、第2次世界大戦時の強制収容所を高級リゾートとして再開発する計画が政府に承認され、国際的な波紋を呼んでいる。

再開発が決定したのはアドリア海に浮かぶ直径200メートルほどのマムラ島。モンテネグロとクロアチアの国境に近いコトル湾沿岸にあり、19世紀に作られた要塞が島の大部分を占める。

この要塞は第2次世界大戦中、ムッソリーニ政権下のイタリア占領軍により強制収容所として使用されていた。2300人が収監され、うち130人が殺害もしくは餓死したとされる。

モンテネグロ政府はこのほど、マムラ島を高級リゾートに再開発するプロジェクトを承認した。プールやヨットを係留する港、スパなどを完備する計画だ。

リース契約を得たのはスイスとエジプトの不動産開発会社オラスコム。同社はこのプロジェクトに1630万ドル(約19億円)を投資するとしている。

モンテネグロ観光開発当局のトップ、オリベラ・ブラヨビッチ氏はフランス通信(AFP)に対し、「われわれには2つの選択肢がある。跡地が朽ちるに任せるのか、再開発して観光客が訪れることができるようにする投資家を見つけるのかだ」と述べた。

オラスコムの代理店も、マムラ島のリノベーションは風景や既存の建築、島の持つ歴史的な価値を尊重して行われると述べた。

一方、元収容者の家族らは今回の計画に怒りをあらわにしている。

祖父と父、おじがマムラ島に収容されていたというオリベラ・ドクレスチッチ氏は「多数の人が苦しみ死亡したこの場所に娯楽目的の高級ホテルを建てるのは、あからさまな歴史の軽視だ」「強制収容所がホテルとして再開発されるのは世界的にも例がない」と話す。

ニュースサイトのバルカン・インサイドによると、モンテネグロ政府は、同プロジェクトにより地域経済が活性化するとして今回の決定を擁護。計画には「記念室か博物館」も含まれる予定のため、マムラ島の歴史にも敬意が払われるはずだとしている。

同島の要塞をめぐる論争が始まったのは2013年12月。モンテネグロ政府が「裕福な顧客のニーズと要求を満たす」投資案件として同島を宣伝したことに端を発している。これに対しては国連の故ブトロス・ガリ元事務総長も一時批判を寄せていたが、オラスコム代理店によると、その後博物館も含む案に支持を示すようになったという。

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