エチオピアで深刻な干ばつ、80年代の大飢饉再来も

エチオピア北東部に広がるダナキル砂漠

2016.03.07 Mon posted at 13:10 JST

ワシントン(CNN) アフリカのエチオピア北部で干ばつの被害が深刻化している。100万人の死者を出した1984年の大飢饉(ききん)を上回り、過去数十年で最悪の事態に陥る恐れもあると専門家は予想する。

米政府は人道危機に対応し、米国家安全保障上のリスクを避ける目的で、現地に災害対策支援隊を派遣すると発表した。

84年のエチオピアの大飢饉では大勢の子どもが犠牲になり、故マイケル・ジャクソンやスティービー・ワンダーなどのスター歌手が結集して85年、チャリティーソングの「ウィ・アー・ザ・ワールド」を収録した。

エチオピア政府によると、今回の干ばつでは推定1020万人が食料援助を必要としているほか、約800万人が慢性的な食料不足に陥り、最大で200万人が安全な飲み水を必要としている。国連は、援助を増やさなければ最大で1500万人が急性栄養失調になりかねないと予想する。

米国際開発局(USAID)は3日、「大規模な人道危機を食い止め、エチオピアの発展を守るために行動する」として、災害対策支援隊の派遣を発表。他国にも支援に加わるよう呼びかけた。

米政府はエチオピア支援について、米国の国家安全保障にもかかわる問題と位置付ける。USAIDの広報は、「気候関連の問題が差し迫った課題として我が国の安全を脅かし、自然災害の増加や難民の流入をもたらして、食料や水といった資源を巡る争いを発生させかねない」と警鐘を鳴らす。

食料が不足して仕事もなければ若者は過激派組織に流れ、難民や移民が増えて人口密集地の安定は損なわれる。

アフリカ東部ではイスラム系武装集団「シャバブ」などによるテロが治安を脅かしている

東アフリカのエチオピアやスーダン、ソマリア、ジブチなどでは「シャバブ」など武装集団のテロが続いて治安が悪化。エチオピアは米国と連携して対応に当たっている。

USAIDは災害対策の専門家約20人を派遣して技術支援や人道支援に当たるとともに、400万ドル(約4億5000万円)相当のトウモロコシや小麦の種子を22万6000世帯あまりに供給する。

国連によると、エチオピアの食料安全保障態勢は向上したものの、北部の天候不順やエルニーニョ現象の影響で、今回の干ばつがこれほど深刻化するとは予想できなかった。

国際的な支援も寄せられているが、内戦が続くシリアやイエメン、難民が大量に流入している欧州なども人道援助を必要とする中で、国際社会に「支援疲れ」が生じていると専門家は指摘する。

東アフリカは2011年にも過去60年で最悪の干ばつに見舞われ、USAIDなどは気候変動や自然災害からの回復力を高める態勢作りを支援していた。

USAIDでエチオピア援助を担当したナンシー・リンドボーグ氏は、「あれからわずか5年でさらに深刻な干ばつがエチオピアを襲い、回復力を高めることがこれまで以上に差し迫った課題になっている」「そうした取り組みがなければ、エチオピアの犠牲者は大幅に増加する」と警告している。

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