戦地となったイラク最大のダムに決壊の恐れ、米が大被害警告

決壊の可能性が指摘されているイラクのモスルダム

2016.03.03 Thu posted at 18:47 JST

(CNN) イラクの首都バグダッドの米国大使館は3日までに、イラク北部モスル近くにある同国最大のダムが予兆もなしに決壊する深刻な恐れがある異例の事態となっていると警告した。

このダムは過激派「イラク・シリア・イスラム国(ISIS)」が2014年8月に掌握したが、米軍の空爆支援を受けた少数派クルド人の戦闘部隊とイラク軍が同月、奪還に成功していた。

米大使館はモスルダムの現状の説明文書で、ダムが決壊すれば洪水が発生し、多数の人命損失、大規模な周辺住民の避難や広範なインフラ基盤の破壊につながると指摘。決壊発生が予想される時期に関する特定の情報はないが、強い警告が必要との立場から対応策の整備などを訴えることにしたと述べた。

決壊が差し迫っている理由がダムの構造問題などに起因するのかなどは伝えられていない。

建設業界の関連サイトによると、同ダムの長さは3.2キロで、最大で1250万立方メートル分の水量の止水が可能。決壊した場合、深さ数十フィート(1フィートは約30センチ)単位の水量がチグリス川に押し寄せ、モスルの方向へ流れることが予想される。水流は下流へさらに向かい、バグダッドなどを含む主要都市に洪水をもたらす可能性があるとしている。

ダムが決壊すればチグリス川の下流に位置するバグダッドまで洪水の被害が及ぶ恐れも

米政府の調べによると、決壊が起きた場合、チグリス川沿いに居住する約50万人から約147万人までの住民が最大の危機に直面する可能性があり、退避しなければ予想される洪水被害の犠牲となる恐れがあるとしている。

一方、イラクのアバディ首相は声明で、同ダムが決壊しそうな危機的状況にあることを否定。世界銀行が資金援助し、国際的な著名なエンジニアリング企業によるダムの修復作業が間もなく始まるとの見通しを示した。通常の維持管理作業は既に開始されているとも述べた。

その上で、同首相は決壊が起きた場合、同川流域の住民に対し川から少なくとも6キロ離れた高地への移動を助言。声明はまた、決壊発生の際は政府は住民に緊急警報を出すとし、居住先などを失った住民は支援するとも主張した。

ISISから奪還したダムに決壊の恐れ

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