ワシントン(CNN) ロシアが大陸間弾道ミサイル(ICBM)の一部を改造し、地球に衝突する恐れのある小惑星を破壊する計画に乗りだしていることが20日までに分かった。ロシアの有力ロケット研究者が明らかにした。
マキーエフ・ロケット設計局のサビト・サイトガラエフ氏は先週、国営タス通信のインタビューでこの計画を明かした。
小惑星が地球に衝突するのを防ぐ方法をめぐっては、米国もいくつかの方法に取り組んでいる。ただアプローチは異なり、米航空宇宙局(NASA)の計画は隕石を破壊するのではなく、その軌道を迂回(うかい)させて衝突を防ぐものだ。
ロシアのミサイルは直径20~50メートルの小規模の小惑星に使用される見通し。こうした小型の小惑星は大きな損害を引き起こす可能性があるが、天文台でも地球に接近する数時間前にならないと探知できない。
まったく探知できない場合もある。ロシア南西部のチェリャビンスク上空では2013年、直径20メートルの隕石が空中で爆発。衝撃はTNT火薬30万トン相当あまりに上り、1000人以上の負傷者が出た。
人工衛星を軌道に乗せたり、宇宙ステーションに人や物資を運ぶロケットとは異なり、ICBMは戦争での使用を念頭に開発されており、即座に発射することができる。
ロシアが宇宙利用のために核ミサイルを改造するとの見通しは、米軍内の懸念を招く可能性がある。米国家情報長官室はすでに、宇宙でのロシアの軍事活動について懸念を表明している。
ロシアは核弾頭を搭載したICBMを多数保有しており、これらは用途変更に合わせて改造できる可能性がある。転用したミサイルに通常の弾頭を使う計画なのかは不明だが、ロシアの目標捕捉システムは大幅な改良が必要になるとみられる。
サイトガラエフ氏はタス通信とのインタビューのなかで、こうした改良には時間がかかるほか、コストも数百万ドルに及ぶと認めた。ただ、2036年には直径約325メートルの小惑星アポフィスが地球近傍を通過する見込みで、これに対し新ミサイルの性能を試したい考えだ。
天体物理学が専門の米パデュー大学教授、ヘンリー・メロシュ氏は、核兵器を転用する選択肢に警鐘を鳴らす。ロシアの取り組みは「誤っており、潜在的な危険を伴う」と指摘。小惑星の脅威について過度に深刻になる必要ないとの見方を示したほか、「時間はかかるが、他にも小惑星の軌道を変える安全な方法がある」と述べた。