大人向けの塗り絵が流行 人気の背景は

複雑な図柄の大人向け塗り絵にはまる人が急増

2016.07.23 Sat posted at 20:00 JST

(CNN) 大人向けの塗り絵本が流行している。大人の注目を集めるきっかけとなったのは、子どもに人気のクレヨンメーカー「クレヨラ」社だ。同社は昨年12月、マーカーや色鉛筆と大人向けの塗り絵本をセットにした「カラーリング・エスケープス」を発売した。

商業的に成功した最初の塗り絵本が発売されたのは2012~13年。だが、これまでニッチ的な趣味だった大人の塗り絵は今や、全面的な流行になった。大学の研究者やヨガ雑誌の編集者が、瞑想(めいそう)に代わる手法として塗り絵を推奨している。流行の背景には、アートセラピーの影響がある。

米アートセラピー協会はアートセラピーについて、芸術作品を生み出す過程で「気持ちを探り、感情的な葛藤を解消し、自己意識を醸成し、行動や中毒症状を管理し、社会的なスキルを高め、現実への向き合い方を改善させ、不安感を減らし、自尊心を高める」技能だとしている。基本的には従来のセラピーと一緒だ。ただ、アートセラピーは学びを得たり自己を向上させたりするだけでなく、自分を表現するための手段でもある。

だが、大人の塗り絵本とアートセラピーのセッションは厳密には同じではないので注意が必要だ。米ニューヨーク大学の臨床准教授でアートセラピストとしての資格も持つメアリーグレース・バーベリアン氏は、「アートセラピーは患者とセラピストの関係に立脚したものなので、塗り絵それ自体はアートセラピーとは言えない」と指摘する。

アートセラピー協会の学会誌によれば、アートセラピーが実践され出したのは1940年代。一方、塗り絵をセラピーの手段として使うことに関する研究は、90年代半ばに始まったばかりとされている。

塗り絵には集中力を高め、瞑想に近い状態をもたらす効力が期待できるという

ただ、厳密には同じものではないにせよ、塗り絵は各種の精神的効果を与えてくれる。バーベリアン氏は「塗り絵には確かに、不安感を減らして集中力を高め、より瞑想に近い状態をもたらす潜在力がある」と話す。2005年に発表された画期的な研究では、被験者が曼荼羅(まんだら)を塗りつぶしているとき、不安感が減少することが示された。

また、塗り絵は瞑想と同様、脳を目の前のことに集中させ、ばく然とした不安感を和らげる助けにもなる。バーベリアン氏は、派手な表現方法は落ち着かないという人には特に塗り絵が効果的だと指摘。「私の経験では、警戒心が高い参加者ほど塗り絵に心の静けさを見出す傾向にある。塗り絵は安心感が高く、作業中の満足感も得られる」と話す。

精神面や感情面で大きな問題を抱えている場合、塗り絵単体よりもアートセラピーの方が効果的だ。だが、気持ちを落ち着けるための趣味が欲しいだけという人には、塗り絵本が足がかりとなる。

塗り絵本を紹介するウェブサイトによると、大人の場合はクレヨンを試すのではなく最初から色鉛筆を使ったほうが良いという。精密な作業の方が集中しやすいためだ。クレヨラ社では、色を混ぜたりすることで道具の質を一段と高める方法も紹介している。

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