「処女が条件」の奨学金に賛否両論 南アフリカ

「処女」を条件とした奨学金が南アフリカで物議を醸している

2016.02.01 Mon posted at 17:15 JST

南アフリカ・レディスミス(CNN) 南アフリカ東部クワズールナタール州のウトゥケラ市で、性経験のない女子学生だけを対象にした奨学金制度が導入されて物議を醸している。

ウトゥケラ市に住む18歳のトゥーベさんは、まもなくプレトリアの大学に進学する。家族に学費を払う余裕はなく、市からの奨学金が頼りだ。

「処女奨学金」と呼ばれるこの制度は、性経験のない女子だけに受給資格がある。トゥーベさんは休みごとに、確認のための検査を受けなければならない。検査は町の長老の女性が手作業で行う。

「目標を達成するため、男性には近付かないことにしている」「処女でいられるチャンスは一度限りだから」と、トゥーベさんは話す。

この奨学金に対して、国内の人権団体からは「人権侵害で性差別的」と批判の声が上がっている。

ウトゥケラのドゥドゥ・マジブコ市長

男女差別の問題に取り組む団体のメンバーは「女性の能力ではなく、処女であることが援助の条件という固定観念を広めてしまう」と懸念を示す。

野党は国の人権委員会に人権侵害を申し立て、一部の活動家らはこの制度が憲法違反だと主張している。

これに対してウトゥケラの女性市長、ドゥドゥ・マジブコ氏は「批判する人たちはだれも解決策を示そうとしない」と反論する。自身が高校生の時に妊娠した経験を持ち、少女たちには同じ苦労をさせたくないとの思いが強い。

十代の妊娠を防ぐ対策はこれまでいくつも試みてきたが、どれもうまくいかなかったという。

2012年に実施された最新の調査によると、同州は十代の母親による出産の割合が南ア国内で最も高い。この年に15~19歳の少女が出産した子どもは2万6000人を超え、14歳以下の出産例もあった。

クワズールナタール州は十代の母親による出産の割合が南ア国内で最も高いという

そのうえウトゥケラはエイズウイルス(HIV)感染率が非常に高く、妊婦の半数が感染者とされる。

「少女たちは弱い立場にある。年上の男性との性交渉を断われず、避妊具を使ってほしいと言い出すこともできない」と、マジブコ氏は語る。

トゥーベさんの身の回りには、性交渉の見返りに金や贈り物をもらえる援助交際の誘惑に負ける高校生もいる。在学中に妊娠した場合、そのまま中退してしまう生徒が多い。

奨学金制度は少女たち自身の提案から生まれたと、マジブコ氏は説明する。トゥーベさんも、この制度を自分の身を守るための手段ととらえている。「これは私自身の選択」と話すトゥーベさんにとって、「処女奨学金」は教育を受けられる唯一の道なのだ。

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