ロンドン(CNN) ロシアの元情報機関員が2006年にロンドンで殺害された事件について、英国の独立調査委員会は、ロシアのプーチン大統領がおそらく殺害を承認していたとの調査報告書を発表した。
殺害されたのはロシアの情報機関「連邦保安局(FSB)」のアレクサンドル・リトビネンコ元局員(当時44歳)。調査報告書によれば、ロシア人工作員2名が放射性物質ポロニウム210を使ってリトビネンコ氏を殺害したことは「間違いない」という。
またこの2人は、FSBの指示で犯行に及んだとみられるという。
報告書には「FSBのリトビネンコ氏殺害作戦はおそらく、ニコライ・パトルシェフ氏とプーチン大統領の承認を受けていた」と書かれている。パトルシェフ氏は2006年当時、FSBの長官を務めていた人物。
もっともロシア外務省は、調査報告書は政治的動機によるものだと一蹴。同省報道官は21日、「純粋な犯罪事件が政治利用され、両国関係の全般的な空気を悪くしたことを遺憾に思う」と述べた。
リトビネンコ氏は1990年代にFSBの汚職摘発部署の責任者を務めていたが、2000年に英国に移住。妻のマリナさんによれば、当時から英国の治安当局で働き始めていたという。
リトビネンコ氏はまた、1999年にロシアで起きた連続アパート爆破事件について、FSBが裏で糸を引いたと批判していた。事件は同年のロシアによるチェチェン侵攻のきっかけとなった。
死の直前、リトビネンコ氏は自分の毒殺を命じたのはプーチン大統領だとする声明を発表していた。
ロシア政府は一貫してプーチン氏の関与を否定しているほか、容疑者2人の英国への引き渡しも拒否している。