「米国籍の男性」に単独取材 北朝鮮が拘束、スパイ容疑で CNN EXCLUSIVE

CNNのインタビューに答えるキム・ドンチュル氏

2016.01.12 Tue posted at 11:38 JST

平壌(CNN) 水爆実験を行ったという北朝鮮の発表を巡り緊張が高まる中で、北朝鮮がスパイ容疑で逮捕した米国籍とされる男性について、CNNは12日までに、平壌市内のホテルで単独インタビューを行った。

インタビューの中でキム・ドンチュル(62)と名乗った男性は、米国の市民権を取得してバージニア州フェアファックスに住んでいたといい、「米国か韓国の政府が私を助けてくれることを願う」と訴えた。

看守の指示により、インタビューは北朝鮮側が指名した通訳を通して行われ、CNNが後に通訳内容を検証した。

キム氏は2001年、北朝鮮との国境に近い中国の延吉市に移り住み、そこから北朝鮮の経済特区に指定された羅先に通って国際貿易会社の社長を務めていたという。

スパイ容疑で逮捕されたのは2015年10月。韓国側の指示で「軍事機密や醜聞の写真を撮る任務を帯びていた」と語り、多数の韓国人から「北朝鮮に対する憎しみを植え付けられた」と告白。「(北朝鮮の)体制破壊に手を貸すよう頼まれた」と話す。

北朝鮮当局者によって提供されたキム氏のパスポート

キム氏の話では、北朝鮮当局者は2009年からキム氏の行動を監視していたとされる。

スパイ活動を始めたのは2013年4月で、地元住民を買収して情報を収集させ、中国や韓国にその情報を渡していたという。ただ、米国のために働いたことはないと言い切った。

逮捕されたのは、軍事機密の収集に使っていたUSBメモリーとカメラを受け取るため、情報源の男性と会っていた時だった。相手の男性は35歳の元兵士で、一緒に逮捕されたが、その後どうなったかは分からないという。

中国に残してきた妻と2人の娘とは、逮捕されて以来連絡を取っていないと語った。妻への電話は、キム氏に渡された番号に何度かけてもつながらなかった。

キム氏は北朝鮮の経済特区である「羅先」で働いていたという

キム氏は健康状態は良さそうに見えた。1日3回の食事も出され、拘束されている平壌市内のホテルでは地元の新聞やテレビを見ることもできると話す。

北朝鮮が6日に実施を発表した水爆実験にも触れ、「今こそ米政府が北朝鮮に対する敵対政策を捨て、北朝鮮支援に乗り出すべき時だ」と主張。「米国は北朝鮮と和解する道を見つけなければならない。平和条約こそそのための手段だと思う」と語った。

今回のインタビューは北朝鮮当局者のいる前で行われた。発言内容が強要されたものだったのかどうかは確認できていない。もし事実であれば、北朝鮮で現在拘束されている米国籍の人物は同氏のみ。これまでその存在は明らかにされていなかった。

インタビューの数時間後、北朝鮮当局者はキム氏のパスポートをCNNに提示した。

米国務省はキム氏の米国籍については確認を避け、「米国人が拘束されたとする個別の事案について公にコメントすれば、解放に向けた努力が複雑化しかねない」と話している。

北朝鮮が拘束した米国人にインタビュー

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。