(CNN) 過激派組織「イラク・シリア・イスラム国(ISIS)」と戦う米軍主導の有志連合は、29日までの3週間の空爆でISISの幹部10人を殺害したと発表した。このうち1人は、先月パリで起きた同時多発テロの首謀者と近い立場にあったとされる。
有志連合のウォーレン報道官によると、死亡したのはイラクとシリアで活動していた幹部10人。うち数人は欧米に対するテロ攻撃を計画していた疑いがある。
シリアを拠点としていたシャラフ・ムアダン容疑者は、24日の空爆で死亡した。同報道官によるとムアダン容疑者は、パリ同時テロの首謀者とされるベルギー生まれのアブデルアミド・アバウド容疑者と直接つながりを持ち、欧米を標的にさらなるテロを計画していた。
アバウド容疑者は、警察がパリ北郊サンドニで行った急襲作戦で死亡した。事件直前にムアダン容疑者と連絡を取っていたとされる。
このほかの9人も今月7日以降に殺害された。欧米へのテロ計画のほか、ISISによる資金集めやハッキング行為にかかわっていたとみられる。
ウォーレン報道官は「指揮を取る人物がいなくなれば、その組織は統制が困難になる」と述べ、ISISに与えた打撃の大きさを強調した。
同時に「まだヘビの頭を切り落としてはいない。牙は残っている。さらに戦い続ける必要がある」とも語った。
一方、パリ同時テロの捜査状況に詳しい情報筋がCNNに語ったところによると、仏捜査当局はムアダン容疑者がISIS内で幹部の地位にあったとは考えていない。同時テロの数日前に犯人らと連絡を取っていた形跡はあるものの、事件自体にどの程度関与したかはまだはっきりしていないという。
同時テロの現場となったコンサートホールに居合わせた生存者によると、実行犯の1人が犯行の最中、もう1人に「スレイマンに電話するのか」と尋ねていた。スレイマンはムアダン容疑者の別名のひとつとして知られる。尋ねられた相手は「いや」と答え、フランス語でなくアラビア語で話すよう注意したという。
同情報筋によれば、ムアダン容疑者はコンサートホールの実行犯の1人と親交があり、2人とも2012年にテロ容疑で取り調べを受けていた。仏紙によると、同容疑者は13年、フランスからシリアへ渡航していたことも分かっている。