(CNN) 中国当局は28日までに、同国の少数民族ウイグル族に対する政策を批判した北京駐在の仏誌記者、ウルスラ・ゴーティエ氏の記者証更新には応じられないとして、事実上の国外追放処分を発表した。
ゴーティエ氏は仏誌「ロブス」の記者として2009年から北京に駐在していた。先月13日にパリで同時多発テロ事件が起きた翌週、18日付の記事で、中国が同事件をウイグル族に対する弾圧の口実にしようとしていると批判。中国が対テロ戦で諸外国との団結を表明する裏には、ウイグル族の分離独立派を「テロリスト」とみなす政策を国際社会に認めさせたいとの「下心」があると主張した。
同氏は記事の中で、中国の習近平(シーチンピン)国家主席がオランド仏大統領に対テロ戦での連携を表明した直後、国内の警察が9月に新疆ウイグル自治区で起きた炭鉱襲撃事件の主犯格逮捕を発表したと指摘。しかし襲撃事件は抑圧されたウイグル族が怒りを爆発させた結果であり、「パリの同時テロとの共通点は何もない」との批判を展開した。
中国当局はこれに強い反発を示した。外務省の報道官は26日の声明で、ゴーティエ氏の記事は「罪のない市民を殺害するテロ行為を公然と支持」する内容だったと述べ、同氏が中国国民への謝罪に応じないため取材活動の継続は認められないと言明した。
中国当局は炭鉱襲撃について、「国外の過激派組織」が直接計画したテロ事件との見方を示している。
インターネットのソーシャルサイト上では、米紙の中国特派員や国際人権団体の東アジア地域責任者が相次いでゴーティエ氏への支持を表明している。
これに対して中国の国営メディアや一部のネット利用者らは、「ゴーティエ氏自身がジャーナリストを装ったテロリストだ」などと主張し、当局の決定を支持。政府系の英字紙「グローバル・タイムズ」がネット上で実施した世論調査では、20万人近い対象者の94.6%がゴーティエ氏の追放に賛成と回答した。
中国外務省の報道官は今月、ゴーティエ氏の記事に対するコメントで「なぜ他国の対テロ政策は正当とされ、中国の対テロ活動は民族抑圧と批判されるのか」「これはばかげた論理だ。政治的偏見であり、二重基準だ」など不満をあらわにしていた。
一方、中国で取材活動に当たる外国人記者からは、当局の報道の自由に対する締め付けは強まるばかりだとする声が上がっている。