ロシア旅行会社、内戦のシリア観光を企画 「前線」見学も

シリアのアサド大統領の名を冠した同国への観光ツアーをロシア企業が企画

2015.12.24 Thu posted at 19:33 JST

(CNN) 英紙デーリー・メールなどは24日までに、ロシアの旅行会社が内戦下にあるシリアへの「観光ツアー」を企画し、来年開始するためロシア連邦政府の観光局に事業認可を申請したと報じた。

シリアのアサド大統領の名前にちなむ「アサド・ツアーズ」とする旅行日程は4〜5日間で、内戦の「前線」見学も盛り込まれている。費用は約1500米ドル(約18万円)で、航空便、宿泊、食事や引率ガイドの費用も含まれる。ただ、生命保険料などは除外されている。

このツアーを企画しているのは「メガポリス」社。デーリー・メールによると、同社の認可申請を手伝っている別のロシア企業の社長は「人々は自らの面前で展開しつつある歴史誕生の目撃に好奇心を抱いている」と指摘。前線見学については「最も近くても1キロ手前にとどめる。それ以上近づかなければ安全。観光客に武器を与えることは決してしない」と主張している。

ツアーの参加者は30〜45歳で、教育を受けて知性的な階層であり、職業的には貿易業者や企業幹部と見込んでいる。「彼らは新たに政治的な不安定な地域への興味を持っている」と述べた。「正気ではない参加者が何人集まるだろうかと尋ねるかもしれないが、全ての観光客は正気ではない」との持論を続け、「観光客はテレビで無料で見られる事柄にお金を支払う」と主張した。

また、ロシア紙ノーバヤ・ガゼータの取材に応じ、多数のシリア人がロシアの大学で学び、ロシア語の会話には不自由しないとし、観光客は通訳に困ることはないとも説明した。シリアには現在、ロシア軍部隊が派遣されており、シリア人はロシア人に慣れているとも述べた。

シリア国内の空軍基地で任務に就くロシア軍の戦闘機

ロシアはアサド政権にてこ入れを図るため軍事介入に踏み切り、空爆で過激派「イラク・シリア・イスラム国(ISIS)」の拠点破壊を進めている。

同社長は内戦下にあるシリア人はお金に困っており、観光客に宿泊施設を安価に提供するだろうとも予想した。

メガポリス社はツアーを実現させるためシリアのホテルや交通サービス業者と既に接触を開始したともされる。ただ、ロシア連邦政府の観光局はインタファクス通信に対し、同社から事業認可の申請は受けていないと指摘。同局の法務部門責任者は申請していないのでツアーを売り出すことは出来ないとも述べた。

インタファクス通信はまた、ロシアの旅行業界団体の広報担当者の話として、戦闘地帯へ観光客を送り出すことはロシアの法律に抵触していると主張。企業は観光客の身の安全を保証出来ないと述べた。

ロシア紙イズベスチヤは昨年、メガポリス・クロルトと名乗る企業がウクライナ政権軍と親ロシア派武装勢力がにらみ合うウクライナ東部への観光ツアーを企画したと報じたこともある。同社とシリアへのツアーを準備しているメガポリス社との関係は不明。

国連の推定によると、シリア内戦による住民の死亡者は25万人以上で、国内避難民は約760万人となっている。

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