米国の中のムスリム その真実の姿とは

2016.01.01 Fri posted at 17:06 JST

(CNN) パリで起きた同時多発テロや米カリフォルニア州サンバーナディノでの銃乱射事件を背景に、米国に在住するイスラム教徒(ムスリム)に対する風当たりが近年になく強まっている。大統領選で共和党からの指名を目指す実業家のドナルド・トランプ氏は、イスラム教徒の米国への入国を禁止すべきだとの考えを示したが、こうした考えには賛否の声があがっている。

実際のところ、米国に住んでいるイスラム教徒の実態は驚くべきものかもしれない。しかし、それは、トランプ氏やその支持者が考えるようなものとは違った意味でだ。

過去数年に行われたさまざまな世論調査や研究によれば、イスラム教徒は米国で法執行機関がテロの容疑者を見つけ出せるよう重要な役割を果たしている。テロと戦い国を守るために軍務につく者も多い。そして、多くの点で、イスラム教徒も他の米国人と変わらない。

そんな米国の中のイスラム教徒について、「真実の姿」を紹介する。

人口比で見ればごく少数

米国の国勢調査は宗教に関する情報を収集していないため、しっかりとした数字を手に入れることは難しい。しかし、イスラム教徒が大多数を占めて、シャリア(イスラム法)を押し付けてくるということは心配しなくてもよさそうだ。いくつかの試算によれば、米国の成人の人口に占めるイスラム教徒の割合は1%未満。2050年までにこの割合は2.1%に増加するとみられている。米国のイスラム教徒の63%が移民だ。

多くの米国人よりも教育水準が高い

米国のイスラム教徒は主要な宗教グループのなかで、ユダヤ教徒に次いで、2番目に教育水準が高いという。一般的な米国人よりも学位を持っている割合が多い。

性的格差はより小さい

各地のムスリム界では女性は多くの場面で「二流」の地位に追いやられているが、米国では違う。90%が、女性は家庭の外で仕事ができるようになるべきだと考えている。米国の女性のイスラム教徒はイスラム教徒の男性よりも大学や大学院の学位を保有している。さらに、他の宗教グループの女性よりも、専門的な分野で仕事をする可能性が高い。

米国在住は建国以来・・・

学者らの試算によれば、米国に奴隷として連れてこられたアフリカ系(黒人)の4分の1から3分の1がイスラム教徒だった。その多くはキリスト教に改宗させられた。

・・・大都市に集中しているわけではない

米国のイスラム教徒は大都市でも小都市でも全国各地で暮らしている。米国で最初にモスク(イスラム教礼拝所)がたてられた場所はノースダコタ州ロスで、1929年までさかのぼる。

キリスト教徒のように信心深い

イスラム教徒に対する一般的な見方で、ひとつ正しいのは、多くのイスラム教徒は非常に信心深いというものだ。そして、また約半数が毎週金曜日の礼拝に参加するという。こうした点は、キリスト教徒と似ている。キリスト教徒の約70%が人生において宗教が重要だと考えており、約45%が毎週礼拝に通っている。

ただし、思われているほど、教条主義でもない

そうしたイメージの多くはイスラム教原理主義者やコーランの厳格な解釈から生まれた。しかし、米国のイスラム教徒の大部分は違う。調査機関ピュー・リサーチ・センターの調査によれば、米国のイスラム教徒の57%は、イスラム教の教えには1つ以上の解釈の仕方があると考えている。また同様の割合が、他の多くの宗教についても、人々を「永遠の生」へと導いてくれるものだとの認識を示している。

テロに関わったイスラム教徒もいる

米同時多発テロが起きた2001年から2014年まで、109人のイスラム教徒の米国人が米国を標的として攻撃を行った。同時期に、イスラム教徒の米国人によるテロで50人が死亡した。一方で、これ以外の多数の死者が出た銃乱射事件などにより、2014年だけで136人の死者が出ている。

しかし、イスラム教徒はテロに反対している

国内外でテロが発生すると決まって、「ムスリムはこれを糾弾しないのか?」という疑問の声が繰り返し聞かれる。実際のところ、米国内のムスリムはテロを非難しており、その意思を行動で示すケースも多い。デューク大学の調査によれば、米国のムスリムのコミュニティーによって法執行機関に通報されて見つかったテロの容疑者や実行犯は、連邦政府の捜査によって発見された人数よりも多かった。また、調査機関ピュー・リサーチ・センターによれば、イスラム過激派に対する宗教界指導者の非難が十分ではないと答える割合は、米国のイスラム教徒の約半分に上るという。

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