泥が生んだ1億ドル企業 リピーター続出の過酷レースとは

2016.01.01 Fri posted at 18:08 JST

ロンドン(CNNMoney) 泥の中を16キロ以上走り抜け、氷水の中に飛び込み、約3メートルの壁をよじ登り、燃え盛る輪をくぐり抜ける。そして極め付けは、1万ボルト(家畜用フェンスに推奨される水準の2倍に相当)の電圧が流れる送電線が配置されたフィールドを全力で駆け抜ける――。

とても面白いとは思えないが、この過酷なレースに、2015年は50万人もの人々が最高200ドル(約2万5000円)を支払って出場した。これが「恐らく世界で最も過酷なイベント」とされる障害物レース「タフ・マダー」だ。

「実際のところ、人々がタフ・マダーに繰り返し参加する理由はこのレースが楽しいからだ」と語るのは、タフ・マダーの創業者兼最高経営責任者(CEO)ウィル・ディーン氏だ。

「そしてレースを終えた時、心から自分を誇らしく思える」(ディーン氏)

ディーン氏の会社は、軍事訓練からヒントを得た耐久イベントを主催する。同氏はハーバード・ビジネス・スクールの学生だった時にこのアイデアを思い付いたが、教授たちの反応は芳しくなかった。

「私の教授は、(タフ・マダーなど)とんでもないアイデアで、泥の中を走るために金を出す人などいないと言った」とディーン氏は語る。しかし結局、その教授の考えは間違っていた。タフマダーはわずか6年の間に売上高1億ドルの企業に成長した。2010年の創業以来、200万人以上の人々がタフ・マダーのイベントに参加している。

従業員数は約160人で、さらに数百人の請負業者とボランティアの人々がコース作りとイベントの運営を手伝っている。現在、同社は3大陸で年間約50のイベントを開催し、各イベントには約1万人が参加している。参加者は75ドル~210ドルを支払ってチケットを購入する(予約する時期によって価格が異なる)。

一見危険そうなレースだが、参加中に死亡した人はこれまでわずか1人で、マラソンやトライアスロンなど、大勢の人々が参加する他のレースと比べ事故は少ないという。

しかし、このビジネスのランニングコストは決して安くない。

コースに障害物を設置するだけで約20万ドル(約2500万円)かかり、各イベントの総費用は軽く50万ドル(約6000万円)に達する。しかし、参加者は料金を前払いするため、ディーン氏は投資家や銀行からの融資に頼る必要はない。

また仮にこのビジネスを売却すれば、多額の売却金が入ることはほぼ間違いないが、ディーン氏は売却する気はない。

ディーン氏は経営者として、同社の今後の成長を見守りたいと考えており、訓練プログラムやスポーツウェアメーカーとの協力、スピンオフイベントの開催を検討中だ。

同社はすでに、10~12マイルのコースがきつい人向けに、距離を短縮し、レース内容も多少容易にした「タフ・マダー・ハーフ」を発表した。

タフ・マダーのイベントでは時間は測らず、参加者は仲間と協力しながら、自分のペースで完走を目指せる。

ディーン氏は「タフ・マダーは試練であり、チームワークと友情が鍵を握る」とし、さらに「(このレースに参加することにより)人々は満足感や達成感を味わえる」と付け加えた。

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