(CNN) 米コーネル大学とスミソニアン協会の研究チームは10日までに世界で初めて体外受精による子犬の誕生に成功したと報告した。学術誌「パブリック・ライブラリー・オブ・サイエンスONE」で発表した。
今年7月に生まれたのはビーグル犬5匹と、ビーグルとコッカー・スパニエルの雑種2匹の計7匹。親は3組おり、受精卵19個を雌犬に移植していた。生後5カ月となった子犬は全て元気で、健康状態に問題はないという。
コーネル大獣医学部のアレックス・トラビス准教授は声明で、犬を対象にした体外受精は1970年代半ばから試みられていたものの失敗が続いていたと指摘。犬の生殖器系が大半の哺乳(ほにゅう)動物と異なっているのが失敗の原因とされてきた。
同大などの研究チームはこの中で、受精卵を1日余分に卵管に置いた場合、受胎の確率が増えることを発見。マグネシウム成分を細胞培養に加えれば、雌犬の生殖器官内の状態に似ることも見つけ出したという。同准教授は従来にはなかったこれらの技術を試し、受胎の成功率を80~90%に高めることに成功したと述べた。
凍結した受精卵を1年に1、2度しかない犬の生殖に適切な時期に移植するためその瞬間を待ち続けたともいう。
今回成功した体外受精技術は、アフリカに生息するリカオンなど絶滅が危惧される野生犬の保存にも役立つと主張。リンパ腫の発生率が他の犬と比べて高いゴールデンレトリバーなど特定種類の犬の疾患治療や人間の医療技術の進歩にもつながると期待している。
同学術誌が掲載した研究報告書によると、犬と人間に共通する遺伝的な障害や特徴は350以上あり、他の種と比べほぼ2倍の水準になっている。それだけに今回の体外受精技術の確立は人間の疾患の理解を深める上での貴重な材料にもなると期待している。
人間における世界初の体外受精児は1978年に誕生したルイーズ・ブラウンさんで、「試験管ベビー」として騒がれてもいた。