ニューヨーク(CNNMoney) 仏経済学者のトマ・ピケティ氏はこのほど、仏紙ルモンドに寄稿し、テロは農民反乱の極端な形だと論じた。
その中でピケティ氏は「明らかなことが1つある。テロは中東の経済的不平等の上に栄えている。中東が火薬庫化するのに、われわれは手を貸してきた」と説いた。
ピケティ氏によれば、中東では人口の10%に過ぎない富裕層が富の約70%を握っている。同氏は「そうした不平等な開発モデルは災厄しか生まない。それをいかなる形でも支えることは犯罪的だ」と結論する。
もっとも、この分析には異論も多い。
「彼の主張を裏付ける証拠は何もない」と、米シンクタンク「アメリカン・アクション・フォーラム」のダグ・ホルツイーキン総裁は言う。
ホルツイーキン氏は、テロリストは貧しい階層の出身者とは限らないと指摘する。国際テロ組織アルカイダの指導者、オサマ・ビンラディン容疑者は裕福なサウジアラビア人だった。また、米国や欧州の中流・上流階層出身者が過激派組織「イラク・シリア・イスラム国(ISIS)」などのテロ組織に加わろうとする例も多い。
『テロの経済学』などの著書があるプリンストン大学のアラン・クルーガー教授は、世界各地のテロ組織や憎悪に基づき行動する過激派集団に加わった人々について調べた結果、経済力や教育水準は関係ないとの結論に達した。
カンバーランド・マーケット・アドバイザーズのデービッド・コトク最高投資責任者は、インドネシアやマレーシア、インドでも経済格差は大きく、イスラム教徒人口も多いと指摘する。だがどこも、過激派の急拡大には至っていない。
「収入格差は宗教的過激派を突き動かす根本的な要因でもなければ小さな要因でさえない。ピケティ氏の議論は単純すぎる」とコトク氏は言う。