イタリアの隠れた名所、モリーゼを訪れる

モリーゼ州はイタリアで2番目に小さな州。アドリア海に面しアペニン山脈も擁する

2015.11.28 Sat posted at 19:27 JST

(CNN) イタリアのトスカーナ、ウンブリア、シチリアは有名だが、モリーゼという地名を聞いたことはあるだろうか。

イタリア南部への入り口となる同州の知名度は低く、イタリア人のなかにも知らない人がいる。

オオカミやイノシシが生息し、海賊や盗賊による略奪の被害に遭ったゴーストタウンが点在するこの州は、今も手付かずの風景が見られ、また心のこもった羊飼い料理が味わえる。

他にも手付かずのビーチ、雪を頂いた山々、要塞が点在する美しい海岸、ポンペイに匹敵する保存状態の良いローマ帝国時代の町など、見所は多いにもかかわらず、観光客で混み合うことはない。

今回は、そんなモリーゼを訪れる前に知っておくべき7つのことをご紹介する。

1.高たんぱく食品に備えよ

モリーゼ州ではかつて、移牧(夏と冬に牧草を求めて人と家畜が移動する)が行われていたこともあり、今でもあちこちで放牧されている羊、牛、水牛を見かける。

そして、この州の山の新鮮な空気が、ソーセージ、コールドカット、コテンナ(豚皮)などのおいしい肉を生み出す。

地元の名物料理には、豚肉をチリ、ニンニク、酢で調理した「パンパネラ」や、柔らかいラム肩肉にポテトとトマトを添えた「ペザッタ」がある。

また羊のレバーを詰めたソーセージ「トルチネリ」や、ひもで吊るしたひょうたん型チーズ「カチョカヴァッロ」も有名だ。

モリーゼ州名物のチーズ「カチョカヴァッロ」

2.1963年に発足

モリーゼには、もともと好戦的なサムニウム人が先祖代々住み、ローマ共和国の攻撃を撃退したが、侵略はその後も続き、ローマ人、ノルマン人、スペイン人、スラブ人、バルバリア海賊らの襲撃を受けた。

裕福な教皇領とナポリ王国の間にはさまれたこの地域はなおざりにされることも多かったが、1963年、隣接するアブルッツォ州から分割される形でモリーゼ州が発足した。

3.今も毎年8月に「海賊」が襲来

モリーゼ州の人々は、侵略者たちに対し断固として抵抗してきた歴史を誇りに感じている。

周りを壁で囲まれ、白塗りの壁の家や漁師小屋が立ち並び、まるで絵のように美しい港町テルモリでは、毎年8月、1566年に町の住民がオスマン帝国皇帝スレイマン1世の軍隊を撃退した時の様子を再現する祭りが開催される。村人らはベリーダンサーやトルコ軍兵士に扮し、空に花火が打ち上げられる。

ロッケッタ・ア・ヴォルトゥルノのゴーストタウンは崩れかけた中世の村々や要塞がある

4.内陸部に点在するゴーストタウン

モリーゼ州の内陸部には、崩れかけた中世の村々や要塞化された城が点在する。

住民ははるか昔に移住したり、相次ぐ地震でこの地を去ったりして、現在、訪問者を出迎えてくれるのは自由に草を食べている馬たちだけだ。

モリーゼ州のコムーネ(基礎自治体)の1つ、ロッケッタ・ア・ヴォルトゥルノは、壊れた石畳の道やほこりだらけのフレスコ画のある教会、ちょうつがいの外れたドアからなる迷路のような場所で、動物の画像やガーゴイルで装飾されたアーチや、古代の墓地、水路、サン・ヴィンチェンツォ・アル・ヴォルトゥルノ修道院などが見られる。

5.すべての住民がイタリア語を話すわけではない

パニーノを求めて立ち寄ったカンポマリーノ、ポルトカンノーネ、モンテチルフォーネ、ウルーリで、人々がイタリア語に聞こえない変わった言葉を話していても驚くことはない。単にモリーゼ州の「リトルアルバニア」に足を踏み入れただけだ。

これらの地域の方言は、アルベレシュと呼ばれるアルバニア語の一種だ。

13世紀にトルコの迫害を逃れたアルバニア人たちがこの地に住み着いた。彼らは今も、古くから伝わる伝統を守っており、子どもたちは学校で母語を学び、道路標識もイタリア語とアルベレシュの両方で書かれている。

ワインで有名なカンポマリーノでは、アルバニアの風習を描いた壁画が数多く見られる。またウルーリは、「カレッセ」と呼ばれる雄牛が引く荷車のレースで知られる。数百年の歴史を持つこのレースは、毎年5月に開催される。

テルモリから近いトレミティ諸島はかつて政治犯の収容所があったが、今は人気のダイビングスポットだ

6.面積は小さいが、すべてが詰まっている

モリーゼ州はイタリアで2番目に小さな州でありながら、海、湖、森林、アペニン山脈を備える。

アドリア海沿岸の手付かずのビーチから車で1時間ほど走れば、スキーリゾートのカプラコッタやカンピテッロ・マテーゼに到着する。

またテルモリからフェリーでほんの少しの距離に、隣接するプッリャ州のトレミティ諸島がある。ここの澄み切った海はダイビングスポットとして人気だ。

7.ローマに引けを取らない古代建築

モリーゼ州イゼルニア県のコムーネ、ピエトラッボンダンテには、共同墓地、聖地、寺院など、紀元前5世紀までさかのぼる遺跡がある。また標高1000メートルに位置し、モリーゼ州の起伏の多い丘陵を一望できる。

カンポバッソ県のセピーノには、古代ローマ時代の地方の町が驚くほど良好な状態で保存されており、塔の遺跡、職人の店、聖堂、噴水、温泉などが見られる。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。