(CNN) 「出て来なさい。彼女に何をした?」
深夜のオーストラリア・シドニー郊外。集合住宅の1室に警官が駆けつけた。扉をノックされて部屋から出てきたのは、顔を真っ赤に紅潮させ、息を切らした男性だった。
21日午前2時前のことだった。「殺してやる」という男の怒鳴り声と、「耳をつんざくような女性の悲鳴」が近隣一帯に響きわたり、周辺の住民から警察に通報が相次いだ。
「奥さんはどこだ」と警官に尋ねられ、一呼吸置いて「そんなのはいないよ」と答える男性。「彼女はどこだ」と問い詰められると「それもいない」と切り返した。
苛立った警官は「女性の悲鳴が聞こえたという通報があった。女性はどこだ」と問い詰める。
「何を言ってるんだか分からない。オレ、一人暮らしだよ」と男性。
殺してやるという怒鳴り声や女性の悲鳴、家具を引っくり返す音を近隣の住民が聞いたと説明されると、男性はボソリとつぶやいた。「クモが出たんだ」「ものすごく大きいやつ」
まだ納得しない警官が「じゃあ女性の悲鳴は?」と尋ねたところ、「あー、その、あれはオレ」「クモはもうとにかく、心底大っ嫌いなんだ」という答えが返ってきた。
つまり、部屋にいたのは本当に男性1人だけで、「女性のような」悲鳴を上げたのも、殺してやると怒鳴ったのもこの男性で、その声は女性ではなく1匹のクモに向けられたということらしい。
警察は念のため、室内を捜索した。見つかった「被害者」はクモ1匹。確かに「かなり大きかった」という。
警察は、クモ恐怖症の男性が殺虫剤を持って家中クモを追い回したことによる騒ぎだったと断定。安堵(あんど)の笑いを残して男性宅を後にした。後日、この一部始終をフェイスブックで報告している。