米国の州知事、半数以上がシリア難民受け入れに反対

濃い色の州が受け入れの反対を、薄い色が受け入れを表明している州

2015.11.17 Tue posted at 20:06 JST

(CNN) パリの同時多発テロ事件を受け、米国50州のうち半数以上に当たる27州の知事が、シリアからの難民を受け入れるというオバマ米政権の方針に反対を表明している。

同事件では少なくとも1人の容疑者が、10月初めにシリア難民としてギリシャで認定を受け、欧州入りしたことが判明した。

シリアでは紛争が始まった2011年以降、25万人が死亡し、2200万人の人口の約半数が国内外へ逃れている。

このうち米国が受け入れた難民は1500人にとどまっているが、オバマ政権は9月、来年は1万人を受け入れるとの計画を発表した。各州からはこの計画自体に反対したり、身元調査の強化を要求したりする声が上がっている。

難民受け入れを決める権限は連邦政府にある。しかし専門家らによれば、州当局が住宅供給の資金を断つなど協力を拒否した場合、実際の受入れは非常に難しくなる。

難民の受け入れ計画自体に反対したり、身元調査の強化を要求したりする声が

受け入れに反対する州知事のうち、1人を除いて26人は野党・共和党の知事だ。

テキサス州のアボット知事はオバマ大統領への公開書簡でパリの事件に言及し、「米国の人道的配慮が悪用され、国民が同様の危険にさらされるかもしれない」と指摘。ツイッターを通して連邦政府にも受け入れ拒否を呼び掛け、「安全が最優先だ」と主張した。

ジョージア州のディール知事は、連邦政府が難民の身元調査手続きを見直すまで同州には受け入れないと表明した。

アラバマ州のベントリー知事は15日の声明で、パリ同時テロを受けて州内への受け入れに反対することを決めたと述べた。

ミシガン州のシュナイダー知事は、住民の安全を第一に考えて受け入れを「保留」するとの声明を出した。

16年大統領選に向けて共和党の指名を争っているオハイオ州のケーシック知事、ルイジアナ州のジンダル知事も、それぞれ反対を表明している。

CAIRは「アメリカの理想を世界に示す必要がある」と主張

一方でデラウエア州のマーケル知事は、「対象となるのはテロの手から逃れてくる人々だ」として受け入れを表明した。

イスラム教市民団体の米イスラム関係評議会(CAIR)は16日、過激派組織「イラク・シリア・イスラム国(ISIS)」に打ち勝つためには「アメリカの理想を世界に示す必要がある」と主張。難民受け入れを拒否する知事らはその理想を捨て、その代わりに「恐怖感を世界に示している」と批判した。

ローズ大統領副補佐官(国家安全保障担当)は15日、米NBCテレビの番組で、米国入りするシリア難民の身元は入念に調査していると強調した。これに対して共和党議員らから、シリア政府には国民の身元を記録したデータベースが存在しないため、調査は事実上不可能だと指摘する声が上がっている。

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