米軍、シリアに地上部隊派遣へ 対ISISで反政府勢力を支援

シリア国内の各勢力の分布図

2015.10.31 Sat posted at 10:20 JST

ワシントン(CNN) 米ホワイトハウスのアーネスト報道官は30日、過激派組織「イラク・シリア・イスラム国(ISIS)」と戦う反政府勢力に支援と助言を与えるため、米軍地上部隊をシリアに初めて派遣する方針を明らかにした。

アーネスト報道官によると、米国は「50人以下」の特殊部隊をシリア北部のクルド人支配地域に派遣。ISISと戦う現地のクルド人部隊やアラブ人部隊に対し、兵站(へいたん)面などから支援するという。

米政府高官も、特殊部隊はまずシリア北部に派遣されると指摘。現地の地上部隊と米軍主導の有志連合によるISIS掃討作戦とを連携させる役割を担うという。この地域の現地部隊は、ISISに立ち向かううえで最も有効な同盟勢力となっている。

今回の米特殊部隊の派遣は、米軍によるISIS掃討作戦の強化としてこれまでで最も重要なものだ。

アーネスト報道官は、少数の特殊部隊では不十分だとする批判を退け、「派遣されるのが世界のどこであろうと、特殊部隊は重要な戦力増強要員となる」と述べた。

アーネスト報道官は今回の派遣について、ISISと戦うシリア国内の現地部隊を育成する戦略の強化につながることをオバマ大統領が期待しているとも言及。「当初から、現地の地上部隊の能力を増強するのが我々の軍事戦略の核となってきた」と述べ、今回の発表でこの戦略が変化することはないとした。また、こうした特殊部隊が戦闘任務に就くことはないとも強調した。

米国防総省の高官によると、最初の部隊は米国から1カ月以内にシリア北部に到着する見通しで、アラブ系シリア人やクルド人らの代表者が集まる非公式の本部施設に主な拠点を置くという。セキュリティー面の懸念から場所については明かさなかった。数週間から数カ月にわたりここに滞在するという。

米国はシリア国内勢力によるラッカの奪還支援を目標に据える

オバマ大統領は50人の部隊を現在の上限としており、最初に派遣されるのは20人あまりとなる見通し。ただ、これより増える可能性もあるという。

反ISIS戦闘員を支援する米軍の主要な目的は、ISISが首都と称するシリア北部ラッカの支配権を脅かす能力を育てることだ。この当局者によると、ラッカを孤立させて制圧し、最終的に同市を掌握するため、戦闘員の能力を向上させるのが今回の狙いだという。

現行計画では、この部隊が急襲作戦や戦闘任務に参加することはないとされている。ただ、自衛の権利は認められており、必要とあれば戦地に踏み入る許可を求めることができる。

米国はまた、A10戦闘機やF15戦闘機をトルコ南部のインジルリク空軍基地に配備し、シリアでのISIS掃討作戦を強化する見通し。当局者によると、イラクに特殊部隊を配置する案も検討されているという。またオバマ大統領はISISに対抗するため、ヨルダンとレバノンへの軍事支援を拡大することも許可した。

米国は2014年9月からシリア国内で空爆を行っているが、ISISを食い止めることはできておらず、穏健派反体制勢力を採用して訓練する計画も大半が失敗。この数カ月は、武器や弾薬などを空からシリアの反体制勢力に投下し、現地勢力への支援を強化していた。

オバマ大統領はイラクやシリアでISISと戦う地上部隊を派遣することに難色を示してきたが、14年の軍事作戦開始以来、米国の関与を深めざるを得なくなっており、イラクに駐留する米軍は当初の300人から3500人以上に増えている。

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