(CNN) 米首都ワシントン圏の防衛目的で使われている北米航空宇宙防衛司令部(NORAD)の飛行船「JLENS」が、係留を外れてメリーランド州の施設から漂流し、隣のペンシルベニア州に着地した。
この間、戦闘機2機が緊急発進してJLENSを追い、船体が上空を漂流した地域で停電が発生するなどの騒ぎになった。
NORADによると、JLENSはほとんど空気が抜けた状態で、ペンシルベニア州内で見つかった。州警察など地元当局は一帯の安全を確保して現場に近づかないよう住民に呼びかけ、軍が船体の回収に向かっている。
ペンシルベニア州コロンビア郡当局や電力会社によると、JLENSは同州ブルームズバーグの上空で電線に引っかかり、約1万5000世帯が停電した。死傷者が出たという情報は入っていない。船体がケーブルを引きずって漂流したため、学校では安全のため子どもたちを避難させた。
国防総省によれば、JLENSを追跡するためF16戦闘機2機がニュージャージー州の州兵施設から緊急発進。米連邦航空局(FAA)も他の航空機の安全を確保するため同船の追跡を続けた。
ペンシルベニア州に着地した経緯について、現時点で詳しいことは分かっていない。国防総省は、軍が動的行動に出たわけではないと説明している。
JLENSは2機の船体で構成する飛行船で、それぞれの全長は約74メートル。ヘリウムガスを使って約3000メートルの高度に浮かび、高性能レーダーで上空から地上の広範囲を監視する。巡航ミサイルなどを使った攻撃から首都ワシントンの一帯を守るため、今年冬に導入された。
全方位に張り巡らせたレーダー網で、ミサイルなどの物体や有人・無人機を最大で約550キロ離れた距離から捕捉できるという。ただしミサイル発射などの能力はなく、カメラも装備していないため、迎撃には地上のミサイルや軍艦、航空機を使う必要がある。
NORAD広報によると、係留が外れた原因は不明。現在調査を進めているという。