ニューヨーク(CNNMoney) 世界2位の経済大国である中国が先ごろ発表した同国の2015年7~9月期の国内総生産(GDP)は前年同期比6.9%の増加だった。ほとんど誰もこの数字を信じていないかもしれないが、そこから見えてくるものもありそうだ。
中国共産党は安定性を最も重要視する。中国政府は今年の経済成長率目標を7%に設定しており、それに近い数字が出てきても驚きはない。
駐中国米大使を務めた経験を持つステープルトン・ロイ氏によれば、かつて中国の首相に中国の統計はどのくらい信頼性があるのか尋ねたところ、「信頼性はないが、風がどちらに吹いているかを教えてくれる」との答えが返ってきたという。
最新のGDPの数字が教えてくれるのは、中国政府でさえ、国内経済が世界的な金融危機以来最悪の水準にあると認めたということだろう。
中国経済は「小さなパニック」にはあるかもしれないが、緊急手術が必要というわけではなさそうだ。世界中の投資家もこれを分かっている。そのため、8月に起きたような株式市場の暴落は起きなかった。
より重要なのは、中国の消費者が支出を続けているというしっかりとした兆候が見えることだ。小売りや不動産販売は上昇しており、製造業の落ち込みの相殺につながっている。
調査会社サンフォード・バーンスタインは、中国市場の実情をより詳しくつかむため、映画の興行収入をはじめ、自動車や携帯電話の売り上げ、アリババの電子商取引に着目している。サンフォード・バーンスタインの試算によれば、7~9月期の実際の成長率は4.1%だという。
調査会社キャピタル・エコノミクスは成長率は4.5%と見ている。
ただ中国経済には成長の余地も残されていそうだ。
金融大手JPモルガン・チェースのダイモン最高経営責任者(CEO)は米ブルームバーグテレビに対し、20年にわたって10%の成長を続けてきた中国も道につまずくことはあるとの見方を示している。
それでも、中国経済は2つの危機的状況に直面している。ひとつは、安価な製品を製造する以上の経済を構築できるか。もうひとつは、米紙ウォールストリート・ジャーナルが「債務爆弾」と名付けた大量の借金だ。
中国経済は、非常に安価な製品を製造し、これらを世界中に輸出することで成り立っている。中国は今、国内消費に支えられた経済への移行を目指している。
著名投資家のジェームズ・チェイノス氏は、経済構造の移行について、普通に考えられているよりも難しいのではないかとの見方を示す。さらに、チェイノス氏がより大きな問題だと指摘するのが負債だ。
連邦政府は多くの資金を持っているかもしれない。しかし、地方政府や銀行、企業は大量の借り入れを行っている。
マッキンゼー・グローバル研究所によれば、2007年以降、中国の負債額は急拡大している。中国の債務は対GDP比で240%に達するという。
この先返済期限を迎えたとき、一部の組織が返済不能に陥る可能性は否定できない。さらに、高齢化の問題もある。
今のところ、市場はこうした問題を真剣に受け止めてはいない。中国を除く各国の経済が苦境に陥っているとき、くれぐれもそうした事態が起きないことを願おう。