米国で成人男性が労働市場にとどまれない理由とは

米国では、安定した雇用状況にない男性の割合が増加している

2015.11.28 Sat posted at 09:34 JST

ニューヨーク(CNNMoney) 米国で労働市場から脱落する成人男性が増えている。1965年には97%近かった25~54歳の男性の労働参加率は現在、過去最低の88%付近で推移している。

この数値は現在働いているか、もしくは過去4週間に仕事を探していた男性らを対象としたもの。もし労働参加率が維持されていれば、仕事に就いている男性は今より500万人以上多かった計算になる。

専門家によると、男性が労働市場から脱落しつつある理由には、それなりの給料の仕事が見つからないことや、就職に必要な学歴やスキルを持ち合わせていないことがある。

リチャード・ケスラー氏(60)は、こうした男性のひとり。かつて金融情報会社でアナリストなどとして働いていたが、1990年代前半の不況で解雇されて以来、職に就いていない。当時は37歳だった。

仕事の見つからないケスラー氏は、家で息子の面倒をみる主夫になった。職探しは継続し、90年代半ばには再訓練プログラムでパソコン技術などを習得。だが提示された仕事の時給は、わずか8ドルだった。同氏は現在、ビジネスアナリストの妻とともにニュージャージー州に住んでいる。

息子が10歳になったのを機に職探しの再開を決意したが、当時は金融危機の最中で求職はわずか。もう1年以上にわたり履歴書を送っておらず、就職するのに必要な技術的スキルや推薦状もない。「職がないストレスと働くストレス、どちらが大きいか分からない。大卒の学位はあるが、今では全く役に立たない」という。

また米国では、収監中もしくは犯罪歴を持つ男性の労働人口に占める割合が増加傾向にある。これらの男性が就職するのは容易ではない。

製造業や建設業の不調が、男性の労働市場への参加をさらに難しくしている

米連邦司法統計局の最新のまとめによると、収監中もしくは保護観察中、仮釈放中の男性は2013年、560万人に上った。米紙ニューヨーク・タイムズなどが今年初めに行った調査によれば、25~54歳で無職の男性の約34%が犯罪歴を持っている。

障害を持つ人々にも厳しい雇用環境が迫る。金融危機の間には、社会保障障害保険(SSDI)に登録することを選ぶ男性が急増。障害者認定されている男性労働者の数は1993年から2013年にかけて倍増し、460万人になった。

デーブ・バーケンブッシュ氏(55)はチャンスがあれば働きたいと考えている。だが、医療費を支払えるだけの給料のある職を見つけられない。嚢胞(のうほう)性線維症を患う同氏は06年、経理の職を解雇されて以来、障害者手当を受給。去年、アルバイトの仕事を見つけたが、時給はわずか15~18ドルだ。15年前にもらっていた給料の半分以下で、年10万ドル近い薬代をまかなえる見込みはない。最近は退職後の生活資金にも手を付け始めた。

若い男性労働者も労働市場から脱落しつつあり、特に大卒者以外でその傾向が顕著だ。こう指摘するのは米マサチューセッツ工科大学(MIT)のデービッド・オーター教授だ。製造業や建設業が不調に陥り、こうした男性が有給の職を見つけられる機会は減っている。

また学歴に関係なく、履歴書に穴があると面接を受けることも難しくなり、半年の空白でさえ問題とされる。エコノミストのジョン・シルビア氏は、「一定期間働いていないと雇用に適さないとみなされる。悪循環だ」と指摘する。

労働参加率の低下は男性やその家族の問題にとどまらず、経済や税収にも影響する。

また、女性との関係にも影響を及ぼすとの調査結果も出ている。米調査機関ピュー・リサーチ・センターが昨年まとめた報告書によれば、女性が配偶者に求めている要素として最も優先度が高いのは、安定した職業に就いていることだ。「経済的なパートナーになれない男性との結婚を選ばない傾向がある」と報告書の著者は語る。

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