英無人機、ISISの英国人戦闘員殺害 合法性に疑問の声も

キャメロン英首相

2015.09.09 Wed posted at 12:18 JST

ロンドン(CNN) キャメロン英首相は7日、英空軍の無人機がシリアで空爆を実施し、過激派組織「イラク・シリア・イスラム国(ISIS)」の英国人戦闘員ら3人を殺害したと発表した。シリアでの軍事行動は議会で否決された経緯があるため、この作戦の合法性を疑問視する声も上がっている。

キャメロン首相は同日の議会で、英無人機が先月、ISIS支配下にあるシリア北部ラッカの近郊で空爆を実施し、車を運転していた英国人のレヤード・カーン戦闘員を殺害していたことを明らかにした。空爆ではさらに英国人1人を含むISIS戦闘員2人も死亡したという。

首相によると、カーン戦闘員は英本土への攻撃を計画していた。空爆で民間人の犠牲者が出なかったことは確認されているという。

首相は「我々が直接行動を取ったのは、ほかに選択肢がなかったからだ」と強調。「この地域には連携相手となる政府も、テロ計画を阻止できる地上部隊も存在しない。カーン戦闘員がシリアから出たり、計画を中止したりする見込みは全くなかった」と説明した。

エリザベス女王が攻撃目標だったとの報道も

ファロン国防相は8日、英メディアとの会見で、英国でのテロ計画を阻止する手段がほかにない場合、政府は今後も躊躇(ちゅうちょ)なく同様の行動を取ると断言。死亡した戦闘員らは「英国内の市街で、公共の行事などにかかわる一連の攻撃を計画していたテロリストだ」と述べた。

キャメロン首相はテロ計画の具体的な内容に言及しなかった。ただ国防省によると、英紙デーリー・エクスプレスとデーリー・テレグラフは、カーン戦闘員がエリザベス女王への攻撃を企てていたと伝えている。

首相は議会での声明で、空爆作戦についてはライト法務長官も国際法上の根拠があるとの見解を示していたと述べ、「英国は固有の自衛権を行使したまでだ」と主張した。情報当局がカーン戦闘員による「英国への直接的脅威」を認めたことを受け、国家安全保障会議の中心メンバーらが作戦実行の決定を下したという。

無人機攻撃について合法性を疑問視する声もあがっている

これに対して野党・労働党のハーマン党首代理は、ライト長官が法的根拠を認めたとはいえ、作戦自体を承認しなかったのはなぜかと追及し、長官の判断や具体的な脅威に関する文書の開示を求めた。

英人権団体「リプリーブ」も強い懸念を示し、「閣僚たちはこれまで議会や国民に対し、議会の承認を得ずにシリアで軍事作戦を行うことはないと繰り返してきた。首相が議会を無視して作戦を実行したのは憂慮すべき問題だ」と批判した。

英下院は2013年、シリア政権による化学兵器の使用をめぐり、政府が提出した軍事介入案を否決した。ISISと戦う有志連合への参加についても、イラクでの軍事行動のみ承認するとの立場を取ってきた。

キャメロン首相は今回の空爆について「英本土への明確かつ具体的な脅威に対処するための限定的な攻撃であり、有志連合による軍事行動の一環ではない」「シリアにおけるISISとの戦い全般に関する方針に変わりはない」と説明している。

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