(CNN) ローマ法王フランシスコは8日、カトリック教徒が結婚の事実を取り消す「婚姻無効」の手続きを改正するとの方針を表明する。寛容な教会を目指す改革の一環とみられる。
カトリック教会は伝統的に民法上の離婚を認めず、教会裁判所が特別な場合のみ、婚姻無効を宣言してきた。この手続きを経ずに離婚して再婚した場合は姦淫(かんいん)の罪を犯したとみなされ、一部の儀式に出ることを禁じられる。
法王はかねて、婚姻無効の手続きには数年にも及ぶ期間と多額の費用がかかることを指摘し、「あきらめてしまう人も多い」と懸念を示していた。
米ジョージタウン大学の研究によると、カトリック教会が2012年に無効と認めた結婚関係は4万件。アフリカ諸国では婚姻無効を申請したカトリック教徒のうち、手続きを完了した人が61%にとどまった。
一方、欧米の富裕国では申請者の86%が無効にこぎ着けている。こうした格差の原因は、教会法学者に依頼する費用を支払えるかどうかという経済的な問題にあるとみられる。手続きの簡素化により、期間や費用の障壁を取り除くべきだというのが、法王の主張だ。
法王は今月初め、カトリックが定める「妊娠中絶の罪」についても、従来認められていた司教だけでなく、すべての司祭に罪を許す権限を与えると発表した。
カトリックの教義などを検討する世界代表司教会議では、法王の提案を受けて家庭や性の問題が取り上げられている。次回の会議は10月に開催される。
専門家らによれば、法王が寛容を説く姿勢の背景には、離婚や中絶、同性愛といった問題をめぐり、教会から離脱する人々が増えているという現状がある。カトリックの信者は近年、中南米や欧州で急減している。
ただ教会内部の保守派の間では、欧米を中心とする「性モラルの低下」に対して「毅然(きぜん)とした姿勢を貫くべきだ」とする声も依然として根強い。
また米国の元カトリック教徒らを対象とした調査では、89%が「カトリックに復帰することは考えられない」と答えるなど、「フランシスコ効果」の兆候はほとんど表れていないのが実情だ。