始業式の日に自殺急増 日本の「いじめ」の現実とは

2015.09.02 Wed posted at 20:00 JST

(CNN) 日本で子どもの自殺が最も多い日は、夏休み明けの9月1日。その背景には、学校でいじめを受ける生徒たちの深刻な悩みがある。いじめの経験をブログなどで発信している女子高校生に、CNNがインタビューした。

ムネマサ・ナナエさん(17)が初めていじめを受けたのは小学生の頃だった。男子にほうきの柄で突かれたり、女子トイレでたたかれたりした。プールの時間に水中でブラシをぶつけられ、おぼれそうになったこともある。額には大きなたんこぶができた。

次第に学校を休むようになり、自殺も考えたという。

ナナエさんだけではない。政府がまとめた過去40年余りの統計によると、18歳未満の自殺者が年間で最も多いのは、多くの学校で2学期の始業式がある9月1日だ。

CNNのインタビューに答えるムネマサ・ナナエさん

いじめられている子どもにとって、家にいられる夏休みは天国。しかし夏が終われば学校へ戻らなければならない。またいじめられる日々が待っていると思うと、自殺という考えが頭をかすめるのだ――と、ナナエさんは説明する。

日本の自殺率は世界でも高い。15~39歳の年齢層の死因のトップは自殺だ。1972~2013年に自ら命を絶った18歳未満の子どもたちは、1万8048人に上る。

ナナエさんは一時的に転校したが、元の学校に戻るといじめはさらに悪化した。自殺を実行しなかったのは、手首を切ったりしたら両親に迷惑がかかる、自殺したって何の解決にもならない、との思いがあったからだという。

ナナエさんは学校へ行くのをやめて、1年近く家にいた。母のミナさんは不登校という選択を認めてくれたという。ミナさんによれば、ナナエさんは当時、「東京タワーから飛び降りたら空を飛べそうな気がする」などと話していた。学校は命をかけてまで行く所ではない、というのがミナさんの考えだ。

問題の根本は集団主義に重点を置く日本の教育制度にあると、ナナエさんは考える。周囲と合わせられなければ無視されるか、いじめられるかのどちらかだ。それでは個性が押しつぶされてしまう。

この見方には、専門家らも同意する。いじめを避けて家にいる子どもたちに向けて、「不登校新聞」という専門紙も発行されている。

現在は学校へ戻り、兄とともにバンド活動も手掛けるナナエさん。日本武道館をファンで埋め尽くし、海外でも演奏するのが夢だという。ブログを書くことで、自殺を考えている人をひとりでも救うことができれば――と発信を続ける。

ミナさんによれば、ナナエさんをいじめから救い出すのに大きな役割を果たしたのはインターネットだ。ネットを通して国内外の人々とつながることで、ナナエさんは自信を取り戻した。大人たちはネットを危険視しがちだが、ネットによって救われる子どもたちも確かにいると、ミナさんは力を込めた。

いじめの現状は、経験者に聞く

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