安倍首相談話「痛惜の念」示す 将来世代の謝罪継続に区切り

安倍首相が戦後70年の談話を発表

2015.08.15 Sat posted at 13:48 JST

(CNN) 安倍晋三首相は14日、戦後70年の談話を発表した。第2次世界大戦で死亡した数百万人の犠牲者に「痛惜の念」を示し、戦争に参加したことへの反省を表明する一方で、日本の将来の世代に謝罪を続ける宿命を負わせるべきではないとの認識を示した。

安倍首相は談話に新たな謝罪の言葉は盛り込まなかったものの、過去の談話を踏襲し、国際紛争を解決するための手段として二度と武力を行使しない決意を保持し続けなければならないと言明。「我が国は、先の大戦における行いについて、繰り返し、痛切な反省と心からのお詫(わ)びの気持ちを表明してきました」と述べた。その上で、中国、韓国、インドネシア、フィリピンなどアジアの隣国の人々が戦争を通じて受けた苦難を、日本は「胸に刻み」力を尽くしてきたと付け加えた。

ただ、安倍首相は日本で現在、戦後生まれの世代が人口の8割を超えていることに言及。「あの戦争には何ら関わりのない、私たちの子や孫、そしてその先の世代の子どもたちに、謝罪を続ける宿命を背負わせてはなりません」とした上で、「しかし、それでもなお、私たち日本人は、世代を超えて、過去の歴史に真正面から向き合わなければなりません。謙虚な気持ちで、過去を受け継ぎ、未来へと引き渡す責任があります」と述べた。

日本政府は過去数十年にわたり、繰り返し謝罪を表明してきた。首相の中には、韓国や中国などアジアの女性を「慰安婦」として日本軍のために使った行為を含む戦争中の日本の行為に対して個人的に遺憾の意を表した人もいる。

14日の談話に謝罪がなかったことに関しては、日本が侵略・占領した中国を含む隣国から冷ややかなものからいら立ちを表したものまで様々な反応があった。

中国国営の新華社通信は14日の記事で、談話は「良く言って薄められたものであり、隣国間での信頼構築に向けいまいちなスタートを切ったに過ぎない」とした上で、「安倍首相の談話は明確な謝罪を表明する代わりに、修辞的なひねりに満ちている。首相の中に深く根付き、日本の隣国との関係に付きまとってきた歴史修正主義の動かぬ証拠だ」と述べた。

談話に対して各国から様々な反応があった

韓国では与党セヌリ党の金栄宇(キムヨンウ)首席報道官が、安倍首相の談話は「直接的な謝罪を含んでいない」と指摘。「安倍首相が慰安婦について間接的な表現で言及したのは遺憾だ」「我々は安倍首相の曖昧(あいまい)な言葉の真意を探るのではなく、心からの反省と平和のための行動を見せるよう引き続き日本に求めていく」と述べた。

安倍首相は14日の談話で、慰安婦問題を示唆して「戦場の陰には、深く名誉と尊厳を傷つけられた女性たち」がいたことを忘れてはならないとしたほか、「女性の人権が傷つけられることのない」世紀を作るために日本が働きかけていくと述べた。

日本は1995年、アジア女性基金の設立を促進。基金は政府の助成金を受け、元慰安婦の女性を支援している。ただ、日本政府が被害者への直接の補償に難色を示してきたことから、活動家や元慰安婦の女性らは、日本の指導者が過去の行いを公式に認めるのを避けているとしている。元慰安婦で今も存命の女性は数十人のみだ。

韓国の金首席報道官は、安倍首相が反省に言及し、「日本がいかに無実の人々に苦痛と痛みを与えた」かについて述べたことを評価。「安倍首相の複雑で悲しい心境が感じられた」と述べた。韓国外務省はCNNの取材に対し、談話を検証中だと回答している。

一方、北朝鮮外務省は国営の朝鮮中央通信(KCNA)を通じてより厳しい反応を見せ、「日本は謝罪をせずに未来と国際社会での貢献について語っている」と指摘。「朝鮮民族への許しがたいあざけりであり、国際社会を欺く行為だ」と述べた。

近隣諸国にとって問題を複雑にしているのは、日本が軍事的姿勢の変化をみせている点だ。日本は先の大戦後、平和主義を保持しており、人道的な役割においてのみ軍隊を派遣してきた。

安倍首相は14日の談話で日本を侵略戦争から引き離す姿勢を見せたが、一方で、自衛隊が同盟国の防衛への関与を含む海外でのより積極的な役割を担えるようにする法律の制定を進めている。中国と韓国は日本の過去の領土拡張論を引き合いに出し、この法案に懸念を表明してきた。

安倍首相は60歳。2006年、戦後生まれとして初の首相に1年間就任した。2期目は12年末に始まった。

安倍首相、談話を発表

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。