(CNN) アフガニスタンの武装勢力タリバーンは30日、組織の最高指導者だったモハメド・オマル師が死亡したことを認めた。アフガニスタン政府はこの前日、同師は2年以上前に死亡したと発表していた。
タリバーンはパシュトウ語の声明の中で、オマル師について「故指導者」と言及した。死亡した日時や死因などの詳細は明らかにしていない。
オマル師はタリバーン政権が14年前に崩壊して以来、公の場から姿を消し、ビデオ声明や音声声明も確認されていなかった。タリバーン内部でも、多くは同師の生死や所在について知らされていなかった。
ロイター通信は30日、パキスタンのクエッタで開かれたタリバーン指導部の会議で、ナンバー2だったアフタル・ムハンマド・マンスール師が全会一致で後継者に選出されたと伝えた。
タリバーンはこれまでのところ、オマル師の後継者について正式発表は行っていない。マンスール師は和平交渉の推進派として知られる。過激派組織「イラク・シリア・イスラム国(ISIS)」とも対立し、ISISのアフガン進出を実質的に阻止している。
しかしマンスール師は指導部の全会一致で選ばれたわけではないとみる専門家もいる。オマル師の長男や、強硬派の軍事部門司令官などの抵抗も予想されるという。さらに部族間の抗争も指摘されている。
こうした内部抗争の展開は、タリバーンとアフガン政権の次回の和平交渉が開かれれば明らかになるとの見方もある。ただ、間もなく交渉が行われるという情報は、タリバーン側が否定した。
パキスタン外務省も、31日にパキスタンで始まる予定だった2回目の和平交渉は延期になったと発表している。
政治コンサルタント会社のソウファン・グループは30日、「オマル師の死亡はアフガニスタンの和平を一層遠のかせ、タリバーン内部の分裂を引き起こす」と分析した。
米中央情報局(CIA)や連邦捜査局(FBI)の幹部だったフィリップ・マッド氏は、オマル師には独特の権威があったと述べ、同師ほどの資質を持った指導者のいる武装組織は簡単には見つからないと指摘する。
その権威はパキスタンの「パキスタン・タリバーン運動(TTP)」にも及んだ。TTPはISISの掲げる「カリフ制(預言者ムハンマドの後継者でイスラム世界の最高指導者であるカリフによる統治)」を否定し、タリバーンとアルカイダを称賛していた。
オマル師の死が明らかになったことで、タリバーンは和平派と強硬派に分裂するとソウファン・グループは予想。「大きな勝者はISISかもしれない。ISISのアブバクル・バグダディ最高指導者は自らをカリフと称して以来、オマル師の血統や資質では自分には対抗できないと主張している」と解説する。