米自治体の不法移民「聖域」政策、女性殺害で論議に

不法移民による女性銃撃を受け米自治体の治安政策に疑問の声が上がっている=遺族提供

2015.07.07 Tue posted at 13:36 JST

(CNN) 米国で、移民の扱いをめぐる連邦政府と自治体の政策の違いが論議を呼んでいる。このほど米サンフランシスコで女性が銃で撃たれて死亡する事件があり、強制送還歴のある不法移民の男が殺人容疑で逮捕されたのがきっかけだ。

被害者のケイト・スタインリさんは1日、市内を歩いていたところを銃で撃たれ、病院に運ばれる途中で死亡した。この事件に関連してフアン・フランシスコ・ロペスサンチェス容疑者が殺人の疑いで逮捕された。

その後の調べでロペスサンチェス容疑者は、過去に何度もメキシコに強制送還されたことのある不法移民だったことが判明。同容疑者は、地面に落ちていたTシャツを拾ったところ、中に包んであった銃が暴発したと主張し、故意を否定している。

サンフランシスコ当局は今年4月にも、麻薬犯罪にかかわった疑いで同容疑者を一時拘束したものの、拘束を求める連邦政府の要請を退けて同容疑者を釈放していた。

釈放の根拠となったのが、同市で1989年に制定されたサンクチュアリ(聖域)法だった。同法では市職員が連邦政府の不法移民取り締まりに協力することを原則として禁じている。

米サンフランシスコでは1989年に不法移民の取締りに関する規制が導入された

同様の法律や規定はサンフランシスコのほかにも200あまりの州や自治体に存在し、連邦政府による不法移民取り締まりの妨げになっている。内容や程度は各自治体によって異なるが、一般的には地元の捜査当局や自治体の職員が不法移民の摘発に関して連邦政府に協力することを規制している。

こうした法律を有する「サンクチュアリシティ(聖域都市)」の推進運動は1980年代、出身国を逃れて中米から米国に不法入国した移民を守る目的で、教会の主導で広がった。

推進する側は、移民が強制送還を恐れることなく警察に協力できるようにすることで、地元当局は凶悪犯罪を摘発しやすくなり、治安改善につながると主張する。

これに対して反対派は、「サンクチュアリ政策は結果としてさまざまな犯罪にかかわる不法外国人に安全な隠れ場所を提供している。不法行為は摘発されにくく、もし捜査当局につかまったとしても強制送還されるリスクは低い。中南米の麻薬密輸組織や犯罪組織、テロ組織の助長にもつながる」と訴えている。

米大統領選に出馬を表明している共和党の候補者からも、スタインリさんが殺害された原因はサンクチュアリシティ政策にあると批判する声が出ている。

移民問題に新たな火種か

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。