北朝鮮、取材「志願者」が人権状況を擁護

北朝鮮は、広範な人権侵害の実態を列挙した国連による自国の調査結果に反発している

2015.09.06 Sun posted at 18:11 JST

(CNN) おそらく世界で最も孤立した国家、北朝鮮を5月に取材してから数週間後、CNN取材班は再び平壌入りする機会を得た。このときに出会ったのは、批判が多い北朝鮮の人権状況を擁護しようとする人々だった。

いつも通り、撮影許可などについての事前情報は平壌に到着するまで得られなかった。

初日の朝に案内されたのは、前回と同じ高麗ホテルの会議室。取材班が5月、2013年に中国とラオスの国境付近で身柄を拘束された若者らと対面したのと同じ部屋だ。若者たちは当時、北朝鮮を脱出して韓国に向かうところだった。

北朝鮮は裏切り者とされる脱北者に対して容赦ないため、帰国した若者らの身の安全については、世界中から懸念の声が上がった。だが、彼らが取材班に語ったのは、平壌市内で最高水準の教育を受けるなど特別待遇を受けているとの内容だった。彼らは北朝鮮の「博愛と寛容」を世界に宣伝するシンボルなのだ。

同じ場所で、またしても北朝鮮の「普通の」人々が待っていた。取材班に同行した政府の世話役によれば、彼らは皆、北朝鮮の人権状況に対する「不当な批判」に対し祖国を弁護するため、志願してこの場に来たのだという。

彼らが本当に自分から志願したのかについては確認しようがない。ただ、北朝鮮は自国の人権状況に関する見解を世界に発信することを熱望しているとみられ、国民を「恐怖に陥れている」とする国連の報告書の内容を激しく否定している。

報告書の中で国連調査委員会が下した結論は、100人以上の被害者や専門家らの証言を聴取して導き出したものだ。衛星写真なども検証した上で、拷問など「現代世界に他に例をみない」広範な人権侵害の実態について列挙している。

北朝鮮は調査への参加を拒否。代わりに、同国が「世界で最も優れた人権システム」を擁しているとする長大な報告書を発表した。その上で人権問題について、米国が内政干渉するための策略に過ぎないと主張している。

北朝鮮の人権状況を擁護するため、同国の一般市民がCNNの取材に「志願」した

5時間以上に及んだ今回の面会では、参加した各自がそれぞれ主張を展開。中にはCNNが過去に報道して注目を浴びた事柄に関連するものもあった。

その一例が、1990年代にクウェートの建設現場で働いた後に亡命したリム・イル氏についての話だ。北朝鮮は外貨を稼ぐため海外で働くことを国民に奨励している。

リム氏はこうした政策に基づいた出稼ぎを「国家的に展開された奴隷制度」と批判。クウェートではあまりに劣悪な環境で長時間労働を強制されたほか、北朝鮮労働者が集住する区域に閉じ込められ、移動の自由を制限されていたと訴えた。

しかし、一緒に中東で働いていたとされる男性3人は、リム氏を激しく非難。1人は「彼はクウェートに数カ月しか滞在しておらず、現場の実情について何も知らない」と主張した。残り2人も、「彼はもともと質の悪い労働者で怠け者だった」などとして、リム氏の勤労意欲を疑問視した。昼夜を問わず労働を強いられたとの情報も否定した。

これについてCNNがリム氏に連絡を取ったところ、同氏は自分の話に間違いはないと回答した。

国外で行方不明になったムン・スキョンさん。両親は韓国当局が拉致したと主張している

北朝鮮では、脱北者の多くは韓国当局によって拉致されたか、「だまされて」国外に逃れた人々だと信じられている。北朝鮮を批判したい韓国にとって、脱北者が次々に現れる状況は都合がいいためだ。

今回の面会に応じたある夫婦は、カンボジアの首都プノンペンで働いていた娘を拉致されたと主張。感情をあらわにしつつ語ったところによると、拉致の実行犯は韓国の国家情報院(NIS)の工作員で、夜間に店の常連客を装ってプノンペン市内にある北朝鮮レストランから娘を連れ出し、タイとの国境を越えた後で行方をくらましたという。

別の女性もまた、中国南部・深圳の北朝鮮レストランから拉致されたと明言。韓国の情報機関のために働く「韓国民族」の手により、2カ月にわたり民家に監禁されたと訴えた。

CNNではこうした主張の真偽を確認できていないが、NISは「事実無根」としている。

面会中はどの「志願者」もこちらと直接会話し、質問に答えた。その間、そばに座る当局者に遮られることはなかった。とはいえ、事前にどのような打ち合わせをしていたかは知る由もない。

CNNの取材に応じる「志願者」たち

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