アトランタ（ＣＮＮ） 過激派組織「イラク・シリア・イスラム国（ＩＳＩＳ）」は４日、シリア中部タドムルにあるパルミラ遺跡の円形劇場で人質２５人を殺害したとする映像を公開した。
映像ではイスラム教の聖典「コーラン」に続き、戦闘の後とみられる路上に遺体が横たわる場面が映し出された。続いて黒っぽい迷彩服を着た人質らがうつむいたまま、劇場の舞台で一列に並んだ。その背後には十代とみられる少年らが並んで立っている。
古い石造りの客席が舞台を囲み、そこに座る人々の姿が映像のところどころに挿入されている。ＩＳＩＳの旗を振る人がいる一方で、顔を覆ったり泣いたりしている人の姿も見える。
少年らは合図とともに、人質らを一斉に射殺した。処刑の場面は、いったん巻き戻してもう一度流すよう編集されていた。
ＩＳＩＳが公開した映像の一場面＝ＩＳＩＳ
映像の長さは約１０分間で、撮影日は不明。英国に拠点を置くシリアの反体制派「シリア人権監視団」は、ＩＳＩＳがパルミラを占拠した直後の５月２７日に処刑が実行されたとの見方を示す。同組織には、このビデオが１本送られてきたという。
映像には、シリアのアサド政権がかつて政治犯を収容していたタドムルの刑務所を破壊する場面も含まれていた。ＩＳＩＳのメンバーが地面に爆発物を仕掛け、覆面の戦闘員が起爆装置を押す。続いて編集で加工された爆発の画像が数枚、映し出される。
パルミラは「砂漠の花嫁」と呼ばれ、かつてローマ帝国と東方を結ぶ交易の拠点として栄えたオアシス。今年５月にＩＳＩＳが占拠し、古代の墓や工芸品、像などを破壊した。寺などの建造物にも地雷を仕掛けているが、その目的は明らかでない。
ＩＳＩＳはタドムル市内の民家を１軒ずつ回って政府軍の兵士を捜し、子どもたちを含めた多数の住民や人質らを殺害している。この一帯はＩＳＩＳにとって、油田やガス田への足掛かりとしても重要な意味を持つとみられる。