それってセクハラ? 女性起業家と男性投資家の「境界線」

過度に親密な態度をとる男性投資家に対し、セクハラではないかと悩む女性起業家もいる

2015.10.25 Sun posted at 18:07 JST

ニューヨーク(CNNMoney) 女性の胸の脇に触れるのはセクハラに当たるのか。

答えはかなり明確なようだ。1秒以上触れれば、間違いなくセクハラになる(1秒なら偶発的とみなされる可能性もある)。

しかし、そこに権力やジェンダーの力学が働く場合(例えば、投資家が男性で、起業家が女性の場合)や、5万ドルもの大金が懸かっている場合には、その境界ははるかに曖昧(あいまい)になるだろう。

女性起業家エマ・テスラー氏(26)は、実際にそのような状況に遭遇した時、不快感と申し訳ない気持ちの間で揺れたという。

「どうしよう、本当に不愉快・・・いや、そんな風に思うのはおかしい。彼は何も悪いことはしていない」とテスラー氏は当時の心境を振り返る。

それは2014年、ベンチャーキャピタルのYコンビネーターが主催するデモ・デーでの出来事だった。このテスラー氏の体験は、起業家たちの活躍ぶりを描いたポッドキャスト「Startup Podcast」のエピソードのメーンテーマでもある。

このシーズンは、テスラー氏とローレン・ケイ氏(25)が共同で設立した出会い系サイト「デイティング・リング」の浮き沈みを追うとともに、シリコンバレーの性差別の問題にも光を投げかけている。

巨額の投資を受けた相手に対しては、デートの誘いを断れない?

テスラー氏は、ある男性投資家と2人でニューヨーク市に戻る際、その投資家から飲みに行かないかと誘われたという。テスラー氏は同意したが、まるでデートの誘いのように聞こえたため、不快に感じたと認めている。

「彼は片手で私を抱き、彼の腕が私の胸に触れた。正確には私の胸の脇」とテスラー氏は当時の状況を振り返る。「そして彼の腕はずっとその位置にあり、まるで私を抱きしめているような感じだった」

投資家は、テスラー氏に5万ドルの投資を申し出た。投資家は「僕らは2人ともニューヨークに住んでいるから、これからも会えるね」と述べたという。

結局、デイティング・リングはその投資の申し出を断った。しかし、それは決して簡単な決断ではなかっただろう。同社は総額45万ドルの資金を集めたが、テスラー氏によれば、5万ドルは(家族や友人を除き)1人の投資家からの投資金としては最高額だった。それだけ高額の投資を受けられれば、他の投資家に対しても、自分たちが投資に値するというアピールになったかもしれない。

しかし2人はその投資家に、戦略的な理由で投資は受けられないとメールで伝えた。

さらにデモ・デーの後、2人は多くの投資家から投資を断られる。ケイ氏は投資を断られた約50人の投資家のリストを作成し、自分が女性だからうまくいかないのかと自問し始めた。

シリコンバレーの女性蔑視の風潮は、匿名SNSアプリ「Secret」(すでに閉鎖)の投稿を見ても明らかだ。テスラー氏らは、投資を断られたのは、女性を差別する業界の風潮が原因なのか、あるいは自分たちのビジネスに実行可能性が欠如していたためかを見極めようとした。

米西海岸のシリコンバレー。起業の盛んな地域だが明らかに女性蔑視の風潮があるという

また、2人はデモ・デーに起きた一件以外にも不快な体験をしている。

ケイ氏は次のように語る。

「私はこれまで2人の投資家からデートに誘われた。また、ある投資家は私を仲間の投資家たちに『こちらの美人CEOは、共同創業者も美人ぞろい』と紹介し、その仲間の1人から『今晩、私のホテルのロビーで会ってくれないか』と誘われた」

2人の体験をつづったエピソードがネット上で公開されると、短文投稿サイト「ツイッター」上で、特に男性から肯定的なコメントが数多く寄せられたという。

「こんな体験をしたのは私だけであってほしいが、これまでの視聴者の反響を見ると、とてもそうは思えない」(テスラー氏)

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