ワシントン(CNN) 米軍率いる有志連合の数カ月にわたる空爆にもかかわらず、いまだに地上勢力が衰えないイスラム過激派「イラク・シリア・イスラム国(ISIS)」。次はインターネットの闇を武器として用いる新たな段階に入り、米国防総省が対応を迫られている。
米テキサス州ガーランドで起きた事件は、こうした展開を裏付けるものだ。ISISに共鳴して銃撃事件を起こしたエルトン・シンプソン容疑者は、短文投稿サイトのツイッターで事前に犯行を宣言していた。
警察や米軍も一連の動向に注目する。国家安全保障局(NSA)局長で国防総省のサイバー軍司令官を兼務するマイケル・ロジャーズ氏は、「過激派集団がインターネットをどのようにとらえているかを常に見極めようとしている。勧誘や自分たちの理念を喧伝する手段という見方にとどまらず、システム自体を潜在的な武器とみなすようになれば懸念は増大する」と語る。
国防総省はこの理由から、ほとんどの一般ユーザーが見ることのない「ダークウェブ」または「ディープウェブ」と呼ばれる世界に踏み込むことを余儀なくされた。ISISやその他の潜在的テロリストがこの隠されたインターネットを使って戦闘員を勧誘したり、情報を共有したり、実社会に対するテロを計画したりしていると米当局は見る。
米シンクタンク、ランド研究所のリリアン・アブロン氏は、インターネットを氷山に例えてこう解説する。「氷山のうち水上に出た部分は表層ウェブと呼ばれ、グーグルなどにインデックス化されて検索エンジンで見つけられる。しかし水面下の氷山は、水上部分に対し最大1.8倍の大きさを持つ。ディープウェブと呼ばれるこの部分はインデックス化されない。グーグルで検索できない領域がいかに大きいかということだ。私たちにとってもグーグルにとっても、この部分は闇に包まれている」
そうした領域に光を当てることは至難の業だが、国防総省はどうにかして扉をこじ開け、ISISを追い詰める手段を構築しようとしている。国防高等研究計画局(DARPA)のクリス・ホワイト氏は「問題のコンテンツがどこにあるかを調べて分析できるようにするための技術が必要だ」と話す。
DARPAが開発した「MEMEX」と呼ばれる新技術は独自の検索エンジンとして機能し、グーグルなどの一般的な検索では見つけられないダークウェブ上の活動パターンを明らかにする。
「MEMEXを使えばダークウェブ上のサイトの数とコンテンツの内容を調べることができる。もともとはウェブ上の人身売買を摘発するために開発されたシステムで、ユーザーが隠そうとする不正行為への対処を念頭に置いている」(ホワイト氏)
まずはどこで不正が行われているかを突き止めることから始まる、と同氏は言い添えた。
しかし課題もある。「Tor」のようなツールを通じ、今やウェブ上では簡単に身を隠すことできるのだ。Torのブラウザーを使えば、自分が訪れたサイトや自分の所在地を知られずに済む。ユーザーの姿は基本的に見えなくなるため、米軍や情報機関がISISを追跡して次のテロ攻撃を阻止するのは難しくなる。
ネットの闇に潜むテロの脅威