圧政、飢え、人身売買 難民たちが地中海を目指す理由とは

救助されイタリアまで移送された難民。彼らはさまざまな理由で地中海を目指す

2015.04.22 Wed posted at 14:52 JST

(CNN) 紛争や圧政から逃れて北アフリカのリビアにたどり着き、欧州を目指す人たち。その出身国は20カ国を超す。地中海で相次ぐ難民船の沈没事故で、アフリカ諸国や中東の人たちが直面する現実が浮き彫りになった。

抑圧や兵役を恐れるエリトリア人。「シャバブ」など過激派との衝突激化で避難を余儀なくされたソマリア人。自宅へ戻る希望を捨てたシリア人。セネガルなど西アフリカの各国で所持品をすべて売り払って欧州でのより良い暮らしを夢見る若者たち――。

人権団体などの調査によると、地中海を渡って欧州にたどり着いた何万人もの難民の動機は多岐にわたる。リビアはこうした人たちにとって最も船に乗りやすい場所とされ、2014年は80%がリビアから出港していた。

リビアにたどり着くまでには砂漠や山間部を抜け、拉致や略奪の危険、時にはだまされたり置き去りにされたりする危険にも遭遇する。

転覆した難民船の犠牲者に花を手向ける女性。数多くの難民が命を落としている

何日も歯磨き粉を食べて生き延びたという人もいた。ソマリアからマルタにたどり着いた10代の若者は、残してきた家族に対して来てはいけないと説得し、「95%死ぬのは確実」と伝えたという。

北アフリカの難民の流れを調べている国際移住機関(IOM)によると、特に目立つのがアフリカ北東部エリトリアからの難民で、圧政や貧困、さらにはいつ終わるか分からず脅されたり拷問されたりする恐れもある兵役を逃れて来た人が多数を占めるという。

こうした人たちは国境で拉致される危険をくぐり抜けてスーダンへ渡り、密航業者から別の業者へと引き渡されて地中海沿岸の町にたどり着いていた。

移民調査の専門家によれば、昨年欧州に渡った難民のうち半数はエリトリア人とシリア人が占めていた。アフリカと中東の政情不安に加え、リビアからなら出港できるという期待、他のルートが閉ざされつつある現実が重なって、同地を目指す難民が急増しているという。

米海軍によって救助された難民

3番目に多いとされるソマリア人は、極度の貧困や治安の悪化、性犯罪など深刻な人権侵害、食料や医薬品の不足といった危機的な状況で難民となる人が増えている。

IOMによれば、西アフリカのセネガル、マリ、ギアナ、ガンビアの出身者は経済的な理由から欧州を目指す20代の独身男性が多数を占めるという。これに対して赤十字とIOMは最近、セネガルから来た400人を本国に送還した。

イスラム過激派「ボコ・ハラム」が勢力を拡大しているナイジェリアからは、キリスト教徒の脱出者が増えている。

もう1つの現象として、人身売買されたアフリカの女性がリビアを経由してイタリアに送り込まれ、売春させられるケースも増えている。まだ難民全体に占める割合は少ないものの、2014年に人身売買されて欧州に送り込まれた女性の数は3倍に増えたという。

エリトリア人作家のアブ・バクル・カール氏は自身の経験をもとにした小説「アフリカン・タイタニックス(原題)」で、新しい生活を夢見ながら船の沈没に巻き込まれ、波にのまれる難民たちの悲劇を描いている。

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