人間の頭部移植 2年以内にも実施? イタリアの医師が計画

2015.04.06 Mon posted at 12:41 JST

(CNN) 首から下がまひした患者の頭部を切り離し、脳死と判定された他人の体に移植する――。イタリアの医師が、そんなSFのような移植手術の構想を描いている。米国で6月に開かれる学会で講演して協力者を募る考えだ。

イタリアのセルジオ・カナベーロ医師が検討しているのは、頭部を別の人体に付け替える「HEAVEN(Head Anastomosis Venture)」と呼ばれる手術。ただしまだ乗り越えるべき課題は多数ある。

既に予算の一部は確保済みで、残りは一般から出資を募るクラウドファンディングや書籍の販売でまかなう予定だという。

1例目となる候補の患者は30歳のロシア人男性で、ウェルドニッヒ・ホフマン病という難病をわずらっており、自分から手術を希望しているという。ただしカナベーロ医師はインターネットを介してこの男性と話しただけでまだ会ったことはなく、カルテなども見ていない。

カナベーロ医師は、ほかにも手術を希望する患者からのメールや手紙が大量に届いていると話す。新しい体が欲しいと望むトランスセクシュアルの人も多数を占めるが、1例目の手術は筋萎縮症の患者を対象にすると同医師は強調した。

もう1つの大きな壁はパートナー探しだ。これほどの手術はカナベーロ医師単独ではできず、設備の整った大規模な医療施設の協力は不可欠。6月に米国で開かれる神経整形外科学会の年次総会で計画を説明して協力者を探すとともに、初の頭部移植手術の実施について2017年までに承認を得たい考え。

もし米国で協力が得られなければ、中国を目指す意向だ。

実現のめどが立てば看護師と医師150人のチームを組織する予定で、参加したいという申し出も既に多数寄せられているという。手術にかかる時間は36時間を見込む。

手術成功の可能性については、1970年に米ケース・ウェスタン・リザーブ大学医学校で行われたサルの頭部移植手術を引き合いに出している。サルは手術から8日後に拒絶反応のため死んだ。頭部と体の脊髄を接合できなかったため体を動かすことはできず、自力呼吸もできなかった。71年にサル6匹の頭部を移植した別の実験でも、24時間生き延びたサルはいなかったという。

それでもカナベーロ医師は、医療や科学の進歩によってこうした問題は克服できると主張する。

2013年にはインターネットの医学誌に論文を発表し、脊髄を切断して別の体につなぎ替える技術などについて解説した。

これに対して米脳外科学会次期会長のハント・バチェール医師は、脊柱や血管は接合できても脊髄をつなぐことはできず、患者は動くことも呼吸することもできないと指摘、「この実現は望まないし、自分には絶対にさせない。死ぬよりも悪いことになる」と言い切った。

ニューヨーク大学のアーサー・カプラン医師も、カナベーロ医師の発表には科学的な根拠がないと述べ、馬鹿げた宣伝にすぎないと一蹴している。

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