犯罪都市から南米のシリコンバレーへ 急成長のコロンビア

「シリコンバレー」としても知られるロサンゼルスのベイエリア近郊。コロンビアの首都ボゴタが「南米のシリコンバレー」として注目を集めている

2015.07.05 Sun posted at 17:55 JST

ニューヨーク(CNNMoney) 米交流サイト大手フェイスブックが今年1月に米国外で地域住民との対話集会を開催した際、マーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)が選んだのは、北京でもロンドンでもなく、コロンビアの首都ボゴタだった。一時は麻薬密売や殺人などの犯罪がまん延する都市として知られていたボゴタだが、治安情勢が改善した近年、多くのIT企業が進出しており、躍進を続けるコロンビア経済の象徴となっている。

「ボゴタに来ることができてうれしい」。ザッカーバーグ氏は満員の聴衆にこう語りかけた。コロンビアが「南米のシリコンバレー」として順調に成長を続けていることを証明した瞬間だった。

ボゴダには近年、フェイスブックのほか、米検索大手グーグルや米マイクロソフトなどが相次いで進出している。コロンビア政府によると、2007~12年に同国のIT産業は177%成長し、68億ドル(約8300億円)規模となった。

コロンビア経済の好調を支えているのは、こうした海外の大企業だけではない。コロンビア人自身が積極的に現地のIT産業をけん引している。

ボゴタ市内のストリートマーケット。「犯罪都市」という汚名を返上しつつある

その1人が、IT起業家を養成する学校「HubBOG」を立ち上げたレネ・ロジャス氏だ。「麻薬王」パブロ・エスコバルが君臨していた時代を知るロジャス氏だが、今のボゴタは全く別の都市になったと語る。過去2年、46人の起業家が「HubBOG」を巣立っていった。今年の卒業者は105人を見込んでいる。

国際通貨基金(IMF)によると、コロンビア経済は今年、10年前の3倍の規模にまで成長すると予想されている。

他の南米諸国も同様に成長を続けているが、コロンビアの場合はやはり、犯罪の温床という悪評から脱却したという点で目覚ましい躍進だ。殺人事件の発生率はまだ高いが、この10年では最低の水準となるまで改善した。

世界銀行の報告書によると、コロンビアの中産階級は過去10年間で50%の拡大を記録。こうした成長により、多くの米国企業を引きつけている。米コーヒーチェーン大手のスターバックスは去年、ボゴタに第1号店をオープン。今後5年で50店舗を展開する計画だ。また、フォード・モーターやゼネラル・モーターズ(GM)といった自動車メーカーも売り上げを伸ばしている。

コロンビア経済は引き続き順調な発展を遂げると見られている

ブラジルやアルゼンチンといった他の南米諸国の経済が失速する中でも、コロンビアの勢いは衰えない。こうした成長の理由として頻繁に指摘されるのが、経済の多角化と外国投資への開放的な姿勢だ。

米国の対コロンビア輸出は2003年から400%増加した。米国やカナダ、欧州諸国といった国々と通商協定を結んだのをはじめ、アジアともつながりを強化している。また、多角化という面では、石油、コーヒー、砂糖などへの輸出依存度が依然として高いものの、ITやサービスといった多様な産業を育成してきた。

残る懸念は、反体制派左翼ゲリラ「コロンビア革命軍(FARC)」との和平交渉の行方だ。長年にわたる内戦の後、政府とFARCはキューバで和平交渉を進めている。最近の交渉では、FARCがジャングル内の地雷を撤去することで合意したほか、マヌエル・サントス大統領がFARC支配地域への爆撃を停止することを発表するなど、和平は進展の兆しを見せている。

この点も、コロンビアが暗い過去の記憶を払拭(ふっしょく)し、新たな歴史のページを開きつつあることの証しといえそうだ。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。