(CNN) ドイツの格安航空会社ジャーマンウィングス機がフランス南部の山中に墜落した件で、ドイツ大衆紙ビルトは29日、操縦室の音声を記録したボイスレコーダーに、操縦室から閉め出された機長がアンドレアス・ルビッツ副操縦士(27)に向かって「頼むからこのドアを開けてくれ」と叫ぶ声が収録されていたと伝えた。その13分後、同機はフランスのアルプス山中に墜落した。
捜査当局は、ルビッツ副操縦士が操縦室から機長を閉め出して機体を急降下させ、故意に同機を墜落させたとの見方を強めている。
ボイスレコーダーの録音内容は公開されていない。しかしビルド紙は1時間半分の録音内容に関する記録を入手したと伝えた。内容の信憑(しんぴょう)性についてCNNでは確認できていない。
ビルド紙の報道によれば、パトリック・ソンデンハイマー機長はルビッツ副操縦士との会話の中で、離陸前にトイレに行けなかったとこぼしていた。これに対してルビッツ副操縦士は、いつでもどうぞと応じている。
同機は20分遅れで出発しており、巡航高度に達した後、機長がルビッツ副操縦士に着陸に備えるよう指示した。
その指示に従ったルビッツ副操縦士が、再び機長に「いつでも行って下さい」と促すと、座席を後ろにずらす操作音がして、機長が「引き継ぎをよろしく」と告げた。
午前10時29分、管制塔のレーダーが降下し始めた同機をとらえ、3分後に管制官が連絡を試みた。しかし同機から応答はなく、直後に操縦室内に警報が鳴り響く。
続いてドアを激しくたたく音が響き、機長がルビッツ副操縦士を説得しようとする声と、乗客の悲鳴が聞こえた。
さらに3分が経過。高度7000メートルで大きな金属音が聞こえ、1分半後、さらに2000メートル降下すると「上昇を」と促す警報音が流れる。機長は「このドアを開けろ!」と絶叫した。
10時38分、地上まで4000メートル。まだルビッツ副操縦士の呼吸音が聞こえる。
2分後、右翼が山間部に接触したと思われる物音がして、最後の悲鳴が上がった。
航空専門家によれば、ボイスレコーダーの音声は捜査の鍵を握る極秘情報であり、捜査を終えた時点で最終報告書に一部が盛り込まれることはあっても、当局がそのままの形で一般に公開することはあり得ない。ブラックボックスの内容がこのような形でリークされたのは「信じがたい」という。
フランス航空事故調査局(BEA)は、ビルト紙へのリークに「愕然とした」と話した。
墜落現場では今も捜索が続いており、フライトデータレコーダーはまだ回収されていない。