保存期間100万年?、次世代ストレージはDNA

長期間にわたり大容量の情報を記録する媒体として「DNA」に注目が集まっているという

2015.04.12 Sun posted at 17:36 JST

(CNN) ハードドライブやUSBメモリーなどに保存したデータは永久に存続するわけではない。ある調査によれば、ハードドライブは4年に22%の割合で消耗していくという。10年以上もつ装置もあるかもしれないが、1年ももたない装置もあるかもしれない。いずれにせよ、そうした記憶装置は永遠に存在するわけではない。数百万年にわたって保存できるようなデータ保存の最良の方法を見付けるべく科学者は自然界に目を向けている。すなわち、DNAだ。

こうした研究を進めているのは、スイスのチューリッヒ工科大学に所属している科学者のグループ。彼らが記憶媒体としてDNAに着目する背景には、DNAの莫大(ばくだい)な記憶容量がある。

DNA鎖は複雑かつコンパクトであり、理論上は、わずか1グラムでグーグルやフェイスブックといった巨大企業の全データを優に保存できる可能性を秘めている。データ量で言えば、これは455エクサバイト(1エクサバイトは10億ギガバイト)に相当する。

DNAは時間の経過とともに劣化していくが、化石の中のような特定の環境下では、数十万年ものあいだ生物の全ゲノムデータを保持できることが知られている。

DNAなら大量の情報を保存することが可能だという

チューリッヒ工科大学の化学科および応用バイオサイエンス学科で講師を務めるロバート・グラス氏によれば、目下の課題は、DNAのなかに高密度にデータを記憶する可能性と化石のなかで見つかったDNAの安定性を組み合わせる方法を見付けることだ。

「我々はDNAを安定に保つエレガントな方法を見つけた」と言うグラス氏は、高密度記録媒体としての可能性を模索しつつ、DNAを長期間安定した状態で保存していくことに自信をみせる。同氏が開発を進めているのは、化石の場合と同じようにDNAを低温下で乾燥させた上で、微小なガラス球の中に格納する方法だ。

化石からのDNAの抽出については、これまでのところ約70万年前のものが最古だが、100万年前の化石からもDNAが抽出できると考える人もいる。

グラス氏の方法でも化石と同程度の劣化速度なため、そこから考えれば、100万年の長期保存も可能かもしれないという。

DNAが劣化するメカニズムについては、いまだ未解明の部分が多い。

化石のなかでDNAが保存される仕組みにはまだ不明な点も多い

スペインのシマ・デ・ロス・ウエソス洞窟では、40万年前のミトコンドリアDNAを含む人骨が見つかった。人類のものとしては最古だ。永久凍土層でなくとも、洞窟の涼しい環境下でDNAが生き残ることがわかった。

確かなのは、水と酸素がDNAの保存にとって大敵だということだ。試験管内で水と空気にさらされたDNAは2~3年しかもたない。グラス氏の場合、DNAをガラス内に格納して、これを冷やすことで長期保存を可能にしている。ゾルゲル法という技術によって、比較的簡単にDNA分子の周囲にガラスを張りめぐらせることができるようになった。

同氏の研究チームがDNA記憶装置を使って試験的に保存したデータは、これまでのところ83キロバイトほど。スイス版マグナカルタとも言える「永久盟約」と「アルキメデス写本」だ。こうして保存された文書は1万年後、凍らせれば最長で100万年後も読むことができるという。

問題となるのはコストだ。現在では、わずか83キロバイトのデータを記録するのに2000ドル(約24万円)の値段がかかる。ただ、グラス氏は楽観的だ。

当初は高額だったヒトゲノム解析が数年で数百ドルの安さになったように、DNA記憶媒体も、医療用テクノロジーの進歩にともなって安価になっていくと予想している。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。