サヌア(CNN) 中東からの情報によると、米軍は21日までに、イエメン南部のアナド空軍基地に駐留する特殊部隊の撤退を開始した。治安状況の悪化が理由とされる。
撤退するのは米軍がイエメンに残していた最後の部隊で、海軍特殊部隊SEALs(シールズ)や陸軍特殊部隊デルタフォースが含まれる。
米国は数年前からイエメン政府と協力して、同国を本拠とするイスラム教スンニ派の国際テロ組織「アラビア半島のアルカイダ(AQAP)」の掃討作戦を展開してきた。
しかし同国では今年1月、シーア派武装組織「フーシ派」が首都サヌアを掌握。軟禁されたハディ大統領は南部アデンへ逃亡した。米国はこれを受け、サヌアの大使館を閉鎖していた。
19日から20日にかけて2カ所の刑務所からAQAPのメンバー数百人が脱走し、20日にはフーシ派が集まるサヌア市内のモスク(イスラム教礼拝所)2カ所で自爆テロが発生するなど、同国の治安状況は悪化の一途をたどっている。
モスクでの自爆テロでは少なくとも137人が死亡し、イスラム過激派「イラク・シリア・イスラム国(ISIS)」が犯行声明を出した。事実とすれば、ISISによるイエメンで初の大規模攻撃となる。ISISはAQAPと同じスンニ派の過激派組織だが、両者の間に協力関係はない。
ハディ大統領は21日、アデンへ逃れてから初めてのテレビ演説で、フーシ派にはイランが加担しているなどと非難。国内の各勢力にサウジアラビアの首都リヤドで開く和平交渉への参加を呼び掛け、軍兵士らにはフーシ派の命令を拒否するよう求めた。
これに対してフーシ派の支配下にある国営サバ通信は、最高意思決定機関とされる「最高革命委員会」が「テロ勢力」と戦うために軍の出動を決め、治安・軍事機関に指示を出したと報じた。
米特殊部隊、イエメンから撤退