記者はもういらない? ロボット・ジャーナリストの台頭

「ロボット」が記事を書く時代が到来しつつあるという

2015.04.26 Sun posted at 09:17 JST

(CNN) 企業業績にまつわる報道など、スピードが命の分野では長年にわたり定型化されたスタイルの記事が使われていて、テンプレートに事実や数字をはめ込むことで速報を打ってきた。

だが近年、こうした速報記事で、ロボットが自動生成した原稿が使われ始めている。「ロボット・ジャーナリスト」は米ロサンゼルス・タイムズ紙やAP通信のような大手メディアでも採用されており、将来的には長文の記事にも応用されるかもしれない。

ロサンゼルス・タイムズ紙で地震速報に使われているのは、「クウェークボット」という社内ソフト。米地質調査所(USGS)から提供されたデータを分析し、アルゴリズムに従って自動的に記事を生成する。震動が記録されてからわずか3分で記事を作成、同紙のウェブサイトに掲載する。

近年、金融やスポーツなどデータが豊富な記事や、ニュース速報など、しっかりとした事実を集め、迅速に伝える必要がある分野で、こうしたロボット・ジャーナリストの出番が増えてきた。

その代表格として注目を集めているのがシカゴに拠点を置くナラティブ・サイエンス社だ。ノースウェスタン大学で開発された技術を商用化するため、2010年に設立された。同社は「Quill」というソフトウエアを使い膨大なデータから文書を生成。報告書作成の手間を軽減したい金融系企業やテレビ局などに文書を提供している。

ロサンゼルス・タイムズでは実際に地震速報を専用ソフトが作成している

ロボットが活躍するのは、投資信託の運用成績報告書など、投資家や規制当局に提出する長大な文書を作成する場面だ。

同社の最高経営責任者(CEO)スチュアート・フランケル氏によれば、こうした作業は従来、数人がかりで何週間も取り組む必要があったが、今では独自アルゴリズムの活用により、わずか数秒で10~15ページの報告書を作成できるようになった。

ロボットが自動生成する文章では生硬すぎると思われるかもしれない。だが、同社のアルゴリズムは年々精巧になってきており、硬軟を使い分けてニュアンスに富んだ文章を生み出せるようになった。

スポーツ記事では負けたチームのファンを気遣って共感をにじませた文体を生み出す一方、規制当局に提出する報告書などの場合はできるだけ堅い表現を使うことができる。「自然言語生成」と呼ばれる分野の成果を応用した技術だ。長年の研究から、データを処理するだけでなく、文脈も考慮できるようになった。

人間でなければ自然な文章が書けないというのは、もう過去の話?

こうした言語生成ソフトウエアの洗練を踏まえ、ナラティブ・サイエンス社の主任研究員クリス・ハモンド氏は、5年以内にロボットがピュリツァー賞を受賞するはずだと大胆な見通しを示す。

商用ニュースだけでなく物語性を含んだ長文の読み物についても、今後はロボット・ジャーナリズムの進出が続くとの考えだ。

もちろん、メディア業界で活躍するロボットはあくまで補助的な役割にとどまっており、人間の記者に取って代わる程ではないとの見方もある。

だが、人工知能が洗練の度合いを増していくに従い、人間だけにできることの領域はどんどん狭まってきていると指摘するのはイスラエルの歴史家、ユバル・ハラリ氏だ。

ハラリ氏はCNNの取材に対し、米検索大手グーグルが開発を進める自動運転車の精度の良さを引き合いに出した。そして、運転手だけでなく医者や教師のような人間的な仕事についても、将来的には人工知能の方が優秀になるのではないかと予測。

「意識を持たないアルゴリズムには手が届かない領域で人間がいつまでも独自の能力を発揮していけるとの考えは、希望的観測に過ぎない」と指摘する。

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