(CNN) 北アフリカのチュニジアの首都チュニスで19日、武装集団が博物館を襲撃し、観光客など19人を殺害した。ハビーブ・シド首相は卑劣なテロ事件と断定。逃走した容疑者3人の行方を追っていることを明らかにした。
武装集団は観光客に人気のある同市中心部のバルドー博物館で人質を取って立てこもった。治安部隊が襲撃犯のうち2人を射殺して人質を解放した。犠牲者には観光客17人と治安当局者少なくとも1人が含まれ、その数はさらに増える可能性がある。
シド首相によると、犠牲者にはポーランド、イタリア、ドイツ、スペイン人観光客が含まれる。さらに外国人観光客20人とチュニジア人2人が負傷したという。
シド首相は「チュニジアの経済を狙った卑劣な犯行」と断定し、「我が国を守るために団結しなければならない」と呼びかけた。
バルドー博物館の建物は国会議事堂の建物と隣接していて、事件発生時は議会委員会の会合が開かれていた。議員の1人は「恐怖に駆られた観光客が逃げ惑っていた。私たちは扉を開けて議場へ誘導した」と振り返る。
治安部隊と武装集団の間で銃撃戦が発生すると、議員たちは床に伏せるよう指示され、間もなく避難指示が出されたという。博物館周辺の一帯は封鎖され、救急隊が負傷した観光客を担架に乗せて運び出した。
武装集団の所属組織について、内務省の報道官はイスラム過激派と言及した。
現時点で犯行声明は出されていない。ただ米民間情報機関によると、事件の前日にチュニジアのイスラム過激派組織がツイッターで、「イラク・シリア・イスラム国(ISIS)」のアブバクル・バグダディ指導者に近く忠誠を誓うと表明していたという。
CNNのテロ問題専門家は今回の襲撃について、「チュニジアという舞台へのISISデビューとして、チュニジアのイスラム過激派組織による忠誠表明を控えたタイミングで行われた可能性がある」と指摘する。
チュニジアからイラクやシリアへの渡航者は3000人に上るとされ、ほかのどの国よりも多い。そのうち数百人が帰国したと見られているが、これまで今回のような事件は起きていなかった。
同国では政治家などを狙った暗殺と見られる事件が相次ぎ、山間部で政府軍とイスラム過激派が交戦していた。内務省は2月にテロ容疑で100人あまりを逮捕したと発表した。
チュニジアは北アフリカから中東にかけて広がった民主化要求運動「アラブの春」の発祥の地だった。各国の政権を倒した政変は、2010年12月にチュニジアで行われた抗議デモが発端となった。
チュニジアで博物館襲撃、観光客など19人死亡