自転車は「未来の交通手段」 専用道路の建設計画も

ロンドンでは自転車専用道の建設計画が持ち上がっている

2015.05.23 Sat posted at 09:15 JST

(CNN) 最新の自動車技術がニュースの見出しを飾る中、自転車の存在は忘れられがちだ。だが、自転車の基礎的なデザインが定まった19世紀末、自転車は未来の交通手段として脚光を浴びており、米カリフォルニア州では自転車専用の高架道路の建設も進められていた。

自動車の普及によりこの計画は未完のまま頓挫したが、実は今、自転車専用道路を建設する動きが再び各地で広がっている。建設計画の多くは革新的なインフラやテクノロジーを導入して近未来的な様相を呈している。

クリーンで安価で、路上を行く他の交通手段よりもスピーディーなことも多い自転車は、古くて新しい未来の乗り物になれるだろうか。

自転車専用道路を建設する動きが特に目立つのはロンドンだ。ロンドンは人口密度が高く市街が入り組んでいることから、将来的な交通手段として自転車に期待が集まっている。

ロンドンでは現在、9億ポンド(約1700億円)を投じて欧州最大級の自動車専用インフラを建設する計画が進んでいる。「東西サイクルスーパーウエー」と名付けられたプロジェクトだ。ロンドンの東西18マイル(約29キロ)もの距離をつなぐ。

同市のボリス・ジョンソン市長は、「自転車は既に、ロンドン中心部でラッシュアワー時の交通手段の24%を占めている」と指摘。専用道路の建設により、道路やバス、電車の混雑が減るほか、大気汚染の緩和も見込めることから、自転車を利用しない人も含めあらゆる人の生活環境の改善につながるとして期待を寄せる。

これと並んで有力なのが「スカイサイクル」計画だ。著名な建築事務所ノーマン・フォスターがデザインを手掛ける。鉄道線路の上に高架式で建設される予定で、実現すれば220キロに及ぶ。また、川底につなぎ止める形で、テムズ川沿いに自転車専用道路を浮かべる計画もある。

さらに、もう使われなくなった地下鉄の駅やトンネルを利用して、地下に自転車道路網を敷設する案まである。この計画を推進する建築デザイン事務所ゲンスラーの取締役、イアン・マルカーイー氏は、「使用されていないインフラを再利用することで、現存する地下鉄の駅とロンドン各地を素早くつなぐのが我々の提案の狙いだ」と話す。

ただ、「サイクルスーパーウエー」建設には84%が賛同しているものの、自転車ロビー団体が他の利益団体と衝突している現状もある。

公認タクシーの運転手で作る団体のような反対派は、自転車専用の道路を分離することで自動車用のスペースを奪ってしまい、かえって渋滞につながると主張している。

また、自転車ロビー団体ロンドンサイクリングの側でも、あくまで現存の道路において自転車専用のスペースを拡充していくことが先決だとして、建築事務所の提案する派手な計画に対しては慎重な姿勢を示している。

同団体のキャンペーン部長であるロージー・ダウンズ氏はCNNの取材に答え、「現存する道路網を再設計して自転車のためのスペースを作りだすこと」が狙いだと指摘。「自転車道路を空中や地下に持っていく案は、自転車は魅力的かつ手軽な選択肢であるべきだという原則に真っ向から反するものだ」と付け加えた。

同氏によれば、自転車の最大の魅力は、通学やショッピングなど身近な移動のための手段として活用できること。そのためにも、あくまで現存する道路を安全にして、自転車が利用しやすい環境を整えていくことが重要だとの立場だ。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。